12月17日
319号

◆ 支えあい ◆


先日ご結婚43周年というご夫婦様がおみえになりました。

奥様は、私と同じ股関節の病気とのこと。

なおのこと親近感が湧きました。


お元気そうに見えましたが、最初は交通事故で手術をなさり、

その後も思わしくなくて、もう一度手術をして、今は人工股関節だそうです。

人工股関節でも、左右の足の長さに誰が見ても分かるほどの差があり、

不自由さが推し量られました。


ちょっとお目にかかっただけでも、

とてもあったかいご夫婦様だと感じるのですが、

お話をうかがった時は、さらに胸を打たれました。

一番は、奥様がとてもご主人様やご主人様のご家族様を大事に思い、

それをはばからずに口に出しておっしゃる事です。



   「この人がいつもどんな時も強くたくましく1本の棒となって

    支えてくれるから、何の心配もないのよ」とおっしゃること。



日本では自分の家族のことを人前でほめないし、

謙遜するのが美徳のように思われています。


でも、私は違うと思うのです。


   一番そばに居る人に対しての感謝、

   それはいつも口に出して言うほうが良い。

   直接いうだけでなく他人に対しても、

   自分の家族をほめたほうがいいと私は思います。



今回のご夫婦様は、ご結婚は43周年ですが、

かなり若い時からのお付き合いで、

9年間の恋愛の末、ゴールインし今に至っているそうです。


9年も交際するとなかなか結婚に至らなかったり、

いたっても続かなかったりというケースが多いのに、

きっとよほどお互いが思いやりを持って心を尽くされたのでしょう。


その間、かなりの困難があったのか、

毎年結婚記念日にはお出かけになっているのに、

またご結婚までの道のりをお二人で思い出され、

感慨にふけってお話していたと私に話されました。

すごい事です。



奥様は、


    「私達はかなり結婚前も交際が長くてね、そうした時に、

     この人の両親が素晴らしい人たちだったから、

     恵まれていたのよ」と。


その言い方にもとても力が入っていて、

内容は判らなくても何か引き込まれてしまうような説得力がありました。



結婚43周年で、その前の9年交際期間。


では、思ったよりもご年配だったのかしらと、

改めてお年を拝見すると、ご主人様は69歳とありました。



   26歳の時のご結婚。

   という事は17歳の時からご交際。

   同い年ではないとおっしゃっていたので、

   奥様は15,6歳もしくは14歳くらいだったということに。



私達よりもひとまわりお歳が上なので、

そのころの常識としては、日本では早熟だというか、

あまり良い目では見られなかったかもしれませんね。


ご両親様が素晴らしい人たちだったから、

温かく見守ってもらえたという事なのでしょう。

ご主人様が、独り立ちして養っていけるようにならなくてはいけませんし、

好きなだけでは結婚はできないですものね。



   周りに感謝して相手を信頼して、そして人前でもほめる。

   ずっとそうして支えあってこられたのだなと感じました。



「人」という字は良くできた字です。


   夫婦が必死に作り上げてきた歴史。尊いものです。

   でも、いつかはきっとひとりになってしまう。

   人は一人で生まれ、一人で死んでいく。


急に夫婦のどちらかが先立ったとき、

支えを失った残された人間は、どのようにして自分を支えるのでしょうか?

だからこそ、通常は仲良く、支えあって生きたいものですね。


そんなことまで考えてしまった、今回のご夫婦様でした。



また昨日は、

ご結婚27周年とお越しになってから分かったご夫婦様がお見えになりました。


奥様のご住所は九州。

「遠いですね」というと、

ご主人は群馬で今日は群馬からいらしたそうです。

きっと単身赴任なんだなあと、大変だなと他人事ながら思いました。



   今日は、いつもは離ればなれのご夫婦さまに、

   良い思い出に残る旅になるようにと祈りました。



お話をうかがってみると、


    「掃除がてら、2週間に一度群馬に出向いて、

     ついでにあちこち連れて行ってもらっています。

     今まではそんな事はなかったので、かえってよかったんです」

と奥様。



確かに、いままでずっと一緒だったとすると、

離れてみてはじめてお互いの存在の大切さやありがたさが身に沁みる

ということも有ろうかと思います。


また、別々にいて自分の赴任先に来てもらうと、

今さらのようにお互い新鮮なのではと感じました。



結婚というものは厄介なもので、

男女の違い、育った環境の違い、家と家の違い、

経験の違いなどすりあわせにはみなさん苦労すると思います。



   そして、ずっと一緒にいると、

   当たり前になり大切にしなくなる。

   ちょっとしたことで、気持ちが通わなくなりなりやすい。

   そうした困難を乗り越えて、

   いたわりあえるようになってくる。



そうしたことが、

結婚記念日を迎えるご夫婦様の大切な一日となってくるのです。



私達、夫婦はお互い再婚同士。

一度の失敗があるので、一度目のような同じ失敗はないと思います。

それでもやはり、いろんな苦労はあります。


最近は、お互いに体の衰えや脳のほうの衰えもあるので、

今までに経験のない労わりあい?みたいな感じがあります。

それも、良いですね。


支えがあることはありがたいことです。



   そして、いつかなくなるその支え。

   その時のために、いつも覚悟もしておきましょう。

   自分ひとりを支える自分自身が作る支え。

   出来るでしょうか?



人間であるが故の悲しさや苦しさ、

そしてすばらしさを垣間見る、そんな紋屋のお客様模様でした。



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◆素顔の女将◆

   入院中の義父さんの体調が芳しくなく、

   また義母さんも認知症が始まっていたりして、

   心安らかでない家内.....。

                            (by aruji)
12月3日
318号
◆ 「バスと赤ちゃん」を知って ◆


「バスと赤ちゃん」という話をご存知ですか? 


30年くらい前に実際にあった話だそうで、私は先日テレビで知りました。



   路線バス内で、多くの人たちが乗っています。

   次から次へと乗客が乗り込んできます。

   そのうち段々混んできて、寒い時期でしたが、
   暑さを覚えるような、混雑による不快感を感じ始めました。

   そうした中、一人の赤ちゃんが泣き始めました。

   赤ちゃんはなかなか泣き止みません。

   誰も文句を言いませんが、なんとなく重い空気が流れ始めます。


   赤ちゃんを抱いたおかあさんは、とうとう耐えられなくなり、

   そっと途中駅で降りようとします。


   運転手さんは、それを察して

       「こちらの駅が目的地ですか?」と聞きます。

   お母さんは、

       「本当は駅まで行きたいが、こどもが泣き止まないので
        迷惑だと思って」と、言います。

   運転手さんはマイクのスイッチを入れて、

       「こちらのお母さんは本当は駅まで行くのですが、

        皆さんに迷惑を掛けているので、

        ここで降りると言っています。

        どうかこの親子を駅まで乗せて行って頂けませんか?」と。


   最初の数秒、沈黙していた乗客たちでしたが、

   一人が拍手したことで、その拍手の輪がひろがり、

   全員が結果的に拍手して親子は無事駅まで行くことができた

   と、言うおはなしです。



とても、心のあたたまる良いお話ですね。


最近、公共の場でのマナーの悪さが目立ち、

自分だけが大事な人々が増えています。


   イヤホンをしていても、その周りに結構大きく聞こえる音楽。

   公衆の面前でお化粧をする女性達。

   座っている人の足が大きく前にせり出ていて、

   前に立つ人や電車内を歩く人の邪魔になっている事も。

   濡れている傘を平気で電車の荷物棚に乗せる人。

   電車内だけでなく、携帯メールをしながら歩く人、

   長傘を大きく振って歩く人など、多いですよね。


公共の場のみならず、他人への思いやり、

隣人家族や会社内の仲間への思いやり、取り戻したいですね。



宿でも、他のお客様への迷惑を心配する赤ちゃん連れのお客様。

泣き止まないお子さんを必死にあやすご両親。玄関をでたり入ったり。

そんなに気を遣わなくてもとはたで心配します。


「隣がうるさいから、注意してほしい」というお客様。

赤ちゃんと言っても、乳飲み子の赤ちゃんと1歳半くらいの赤ちゃんとでは、

発する音が違います。

個人的には、赤ちゃんよりも駆け回るような小学生のほうが

賑やかなような気がします。

赤ちゃんが泣いても騒いでも知らんふりのおかあさんは、いけません。


どの立場の人も、自分ひとりではないことを、

考えられる世の中であって欲しいですね。



先日、社長と出かけたときのこと、ある牛タン屋さんに入りました。

店内は狭く、いつも行列ができている店です。

出来るのをカウンターで待っている時、1匹のはえが店内にいました。

ちょっとだけ気になる、いやなハエでした。

狭い店内、行く先々でお客さんが払っています。


   そうしたなか、店長らしき人が、

   そのハエがすこしとまって休んでいる所を、

   そっと上手にビニール袋の中にしとめました。


それをみた社長は、「おお!」と声を上げ拍手しました。

私も一緒に盛大に拍手すると、まわりのお客さんたちも拍手して、

狭いキッチンで一日中、ずっと牛タンを焼いている人たちも、

みんなが笑顔になったのです。


その店は、午後3時くらいから4時くらいしか、

行列が少なくならない人気店です。


中で一日中、牛タンを焼いているだけの人たちは、

暑くて飽きて大変でしょう。


そういう人たちも、隣り合う人たちと、笑って少し話をしていました。

そういうユーモアが大事だなと思うのです。



先日、病院での待ち時間、雑誌を読んでいたら、泉ピン子さんが、

いやな気持ちを幸福に転換するにはユーモアを持つこと、

と書いていました。


社長の話は、赤ちゃんとバスの話とは雲泥の差ですが、

私が夫として一番好きな部分は、おそらくそのような事だと思っています。



赤ちゃんとバスの話は30年も前の実話ですが、

本当に毎日がこんな風だったら、平和ですよね。


ちょうど私が子供を産み、子育てをしていた時代の話。

大きなお腹を見てバスで席を譲ってくださるのは、

たいがいご年配の女性でした。その頃でさえ。


実際、赤ちゃんがずっと泣いてぐずっていると、決して静かではないし、

その時の体調などによっては、

内心あまりうれしくない時は誰でもあります。


でも、みんな生まれたときは赤ちゃん。それはどうしようもない事実。

自分自身だって、周りに迷惑を掛けていた本人かもしれません。




紋屋には、毎日のようにお祝いのお客さまがいらっしゃいます。

先日あるご家族様は、おじい様還暦のお祝いを兼ねて3世代でお越しでした。

そして、事前に一生の思い出に残る旅行にしたいと書いてありました。

気持ちが引き締まる思いでお迎えしました。


おばあ様は、

    「こちらにいる嫁がこの宿を選んでくれたんですよ。

     心づかいが素晴らしいお宿ですね」と、

私にご家族の紹介をしてくださいます。


お祝いの言葉を述べた後、ご家族様お一人お一人が、

「ありがとうございます」とおっしゃってくださいました。


こんなことははじめてでした。

こちらがお祝いしていただいたような気持ちになりました。

私も、その感激をお伝えしお礼を言いました。



次の日も、お昼近くまで灯台の辺りであそび、

また皆さんで紋屋の玄関や外の看板の前などで、

思い思いの写真を撮り、また再三お礼をおっしゃって帰りました。


人とのふれあいで、心が温かくなる時、

人間として生まれてきた喜びを味わえます。




先日、マタニティのプランでお越しになったあるご夫婦。

とてもかわいらしい奥様でした。

これからご実家に帰り、ご主人様としばらく別々になるそうです。


その意味も含めて、思い出に残る旅行にしたいと、

前もってコメントが付いていました。


出産は苦しいものですが、私はその痛みから解放され、

子供の泣き声を聞いたとき、

自分でも子供が産めたんだ!もう一人じゃないんだ。

本当に女でよかったと思えた素晴らしい体験だったのです。


その話を奥様にさせていただいたら、

     「とても力強く勇気付けられるお言葉をいただきました。

      悪阻がひどくて不安なことだらけでしたが、

      とても心強いお言葉でした。

      このお宿に泊まる事ができ、とても幸せです。」

と、アンケートに書いてありました。



30年前の「赤ちゃんとバス」のエピソ―ドの皆さんも、

きっとその時の幸福感を忘れないでしょう。

上記の奥様も、紋屋を忘れないでいてくださると嬉しいです。


紋屋はそのような宿でありたいし、

世の中も人とのかかわりがやさしい時代であってほしいと願います。


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◆素顔の女将◆

家内の実家は、あまり笑いや冗談が出ない家庭の雰囲気だったという。

それがオジンギャグを連発する夫と再婚したためだろう、
最近では影響されて駄じゃれを口にするようになってきた。

お互い、どちらのギャグのレベルが低いか言い合う、似たもの夫婦(笑)

                            (by aruji)
11月14日
317号
◆ 妊婦さん、いらっしゃい! ◆


紋屋は、赤ちゃんプランでは今はもうかなり有名ですが、

最近意外と多いのが妊婦さんのご利用です。


   赤ちゃんプランを立ち上げた頃から、

   妊婦さんのプランも考えていましたが、

   何しろ4階建てなのにエレベーターが無いため、

   最初の数年間は諦めていたのです。


ところが最近の妊婦さんたちは、私が妊婦だった頃より皆さんスリム。

お産が重くならないように、

体重管理を厳しくコントロールするように言われるそうです。


昔と違って、適度な運動も大事。

だから階段の上り下りは体のために良いのだそうです。



   「なぁーんだ!そうだったんだ」と、

    妊婦さんのプランを立ち上げました。



最初は思ったほど、反響はありませんでしたが、ジワジワと増えはじめ、

今ではコンスタントにお客様がお越しになるようになりました。


赤ちゃんプランのお子様達や、

ママたちの様子も見てみたいという方もいらしゃいます。

最近では、その妊婦さんだった方がママになって、

再度紋屋にお越しいただけるようになって来ました。



私も、最初の結婚の時ではありましたが、

やはり安定期に旅行に行きました。

夫婦二人だけという家族の形態は、

子供が生まれた後、ずっと子供が独立するまでなくなります。


   やっぱり、二人だけの生活というものを、

   いつまでも忘れずに良い思い出にしたいという気持ちは

   誰にでもあります。

   今思い返してみても、妊婦での旅はいいものでした。

   まだそれほど忙しくないし、二人きりだし。

   あまり遠くない道のりで、のんびりと過ごせたらいいですね。



子供が生まれたら、否が応でも赤ちゃんが中心の生活となります。

母親というものが初めての奥様方は、

みんなその大変さに、すっかり「夫」という存在の影が薄くなります。


父親としてはまだ頼りないし、

だからと言って、愛しい旦那様と言っている気分でもない。


そういう状態になることもうすうすは承知していても、

どこかで納得できない旦那様たち。

奥さんにとっての1番は、子供が生まれようとも自分のはず...



   でも家族模様は一変するのです。



そういうことを充分承知しているご夫婦でさえ、

やっぱり子供が生まれたその日から恋人気分は遠のき、

赤ちゃん中心の家族となるのです。


核家族化が進んでいる昨今では、

つわりの辛さを聞いて差し上げるだけで、

胸のつかえが取れる方もあるようです。


私の頃は考えられませんでしたが、

臨月でのご旅行という方も少なくありません。

迎えるほうは、もし産気づいたらどうするのだろう!と心配しますが、

お越しになる方々は、いたってのんきに、

「まだ全然兆候なしです。」なんて笑っていらっしゃいます。


他人事ながら自分の経験を省み、

これからも頑張って欲しいなと心の中でお見守りしている私です。



時どき、記念写真をお渡しに伺っています。

そのときに「元気な赤ちゃんを産んでください。」のほかに、

ご主人に「大変なので、手伝って差し上げてくださいね。」と

申し上げています。


大概のご主人様は、「はい」とお返事していらっしゃいます。

そのあとで「宜しくお願いします」とおっしゃる奥様が多いのですが、

「本当だな?覚えてろよ!」と茶化した奥様がいらっしゃいました。

なんとも楽しそうですね。




最近は、結婚しない若者も増えていますし、

結婚年齢も上がってきています。

若いうちから卵子が減り、生理がとまる女性もいるとか。

男性のほうの問題での不妊も、深刻なようです。


   そういうご時勢での妊婦さんは、誠におめでたい。

   元気な赤ちゃんを産んで欲しいですよね。

   老人ばかりの日本に少しでも歯止めをかけ、

   若者があふれる日本であってほしい。


赤ちゃんを望んでいるご夫婦にも、

どうか気分転換をしていただき、子宝に恵まれて欲しい。


今、日本には望まれている妊婦さん。

紋屋はこれからも、赤ちゃん連れと妊婦さんを応援します。




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◆素顔の女将◆

仕事柄、自宅で家内の手料理を手伝うことは少ないが、
たまの休日に一緒に作ったりする。

先日も指示されるままに手伝っていたところ、
家内は作りながら「おかしいなぁ~、おかしいなぁ~」を連発。

メインは「豆腐入りハンバーグ」だったのだが、
レシピを良く見たら、豆腐 2/3丁のところを2丁入れていた。


    結局、焼きあがったのは「挽肉入りくずし豆腐焼き(?)」


まぁ~、それなりにおいしかったですけど(^^;)


                            (by aruji)
10月21日
316号
◆ ほのかな喜び ◆


先日、あるクレームが発生しました。

ネットエージェントを通してのお客様でした。



一度予約してからキャンセルをして、

また短い間に再度ご予約いただいたお客様で、こちらの確認不足のため、

予約がされていない状態に紋屋の社内ではなっていました。


お客様からお越しの前にお電話が入った事で、

はじめてご予約だったことが判明したのです。


ネットエージェントからは予約完了の知らせが入っているのに、

なぜ肝心な宿は、予約を知らないのか。


そのお客様は、愕然となさったのでしょう。

もし、そのまま宿に行っていたらどうなっただろうと。


お越しは、記念日でのご宿泊だったそうです。

期待が大きかっただけに、残念な気持ちが後にも残ってしまったでしょう。




大概の旅館ホテルは、

様々なネットエージェントからの予約が実存する部屋数を超えないように、

客室管理システムを入れています。

紋屋でも、今年の夏前にやっと入れたばかりです。



今回、そのシステムに落とし穴があることを、思い知りました。



20分以内にお客様が予約とキャンセルを入れると、

最初の予約は流れてこないのです。


そのあとに再予約の通知が流れたため、

フロントは、単純な予約のキャンセルと思い処理してしまったのです。



誰が電話を取っても、恐らく予約が入っていない状態でのお電話は、

ふがいないものにきっとなったでしょう。


電話をとった者は、最初はビックリしたけれど、その後はお詫びもして、

お部屋がご用意出来ることも、ちゃんと話したと言っていました。



私はその場にいなかったので、その電話の様子は憶測するしかありません。

しかしお客様が、お電話の向こうで、気を悪くなさった様子が伝わったと、

電話を取ったものも、はっきりと認知していました。



予約が入っていない状態で、突然のお電話の場合、

満足な対応はなかなか出来ませんが、

きっと、その時の対応・声の調子・言葉のはしばしに

お客様の印象を悪くする何かが、きっとあったのだろうと思います。



私がお電話をとったとしても、同じだったかもしれません。



「一言お詫びの言葉が欲しい」とお客様がおっしゃっていると、

後日ネットエージェンのサービス担当者から電話が来たのでした。



その方からは、すぐにでも電話をして欲しいということでしたが、

私は、発生したごたごたについて、ほとんど知らない状態でした。


係わった者、今回の事件の背景、機械のシステム。

一つ一つに当たってみて、それからでないと連絡は出来ないと思いました。

また、電話ではお客様が激昂する場合も想定されます。


出来ることなら、落ち着いて判断し、お客様の立場を踏まえ、

お気持ちを思い図り、誠心誠意の言葉を連ねる事ができるよう、

時間を掛けてお手紙をしたためるほうが望ましいと思いました。



予約の旅館に泊まれなかったのなら、怒られても仕方がない。

でも、今回は泊まれたのだし、と最初は思いました。

客室係にきいても、「私が鈍感なのかしら?

ゲームを借りて、楽しそうになさっていましたけど」と言う返答でした。



人間と言うものは、「気持ち」の部分が大きい。

正直、全てのお客様のお気持ちにはなりきれません。


でも、楽しそうになさっていたのが本当だったとしたら、

「お詫びがほしい」というそのお客様の言葉は、

単純に怒っていらっしゃるというものではないかもしれない、

と感じました。



今回は、お詫び状が届くのに時間がかかり、

それは申し訳ないことでしたが、係わったすべての担当者にリサーチし、

お詫び状も下書きして社長にもみてもらい、清書しました。



     お手紙をお送りして数日後、

     お客様からなんと!お電話をいただけたのでした。



お詫び状を書いてお電話をいただけたことは、今回はじめての経験でした。

到着後が良かっただけに、最初のことがどうしても腑に落ちない。

今後このようなことが起きないようにするためにも、

連絡が欲しかったようです。


到着後がよくても、最初が転んでいると、

普通その後も何でも悪く感じられるもの。

それがそうでなかったから、

やはりそのままにしない方が良いと真剣に考えてくださったのですね。


     とても気持ちのおやさしいお客様だったのでしょう。

     考えに考えて、お便りしたその甲斐がありました。



電話でのクレームは、

ほとんどが怒りを一方的に投げつけられ非難され、

受ける側も大きな打撃を受けます。

実際にお目にかかっているときも同様です。



     でも、そうじゃないクレームもある! はじめての経験でした。



はじめての経験と言いながら、

なんとなく今回は、お電話がかかってくるような気がしていたのでした。

お便りして良かったと心から思え、感動できたのです。




接客の現場では、様々な小さな事件が発生します。


今夏にも、チェックインをしている時、

お客様から怒られたことがありました。


お名前やご住所をお書きいただいている間に、

ご予約内容を復唱し確認します。

特に次々とお客様がご到着になられると、書いている間でないと、

どんどんお客様がロビーに溜まってしまうのです。

でもあるお客さまが、

「今書いているんだから、ちょっと待ってなさい。そんな事じゃだめだよ」

と、たしなめられました。


それ以降は、前日の確認電話で了承が取れている場合は、

もう一度予約内容をすべて復唱しなくてもいいと思えました。

ケースバイケースで確認作業をすればいいと。



お越しになってから、

お子様連れだと判ったというケースも今年の夏ありました。

正直、それはとても困るのです。

部屋食に出来る係りがいない場合もあります。

お子様連れの多い食事処が満席である場合もあります。


その方も別のネットエージェントでした。

ネット担当がその業者の予約サイトを調べたら、

きちんとお子様連れの場合は、

無料幼児でも宿泊施設に連絡するようにと書いてありました。


それを、今後のこともあるのでとお知らせしたところ、

私共が運営するサイトではないのに、書いてある場所がわからないとか、

もっと分かりやすくしてほしい。

そんな事を言われたのが残念とアンケートに書いていかれました。


予約自体をなさった奥様にとっては、

自分がとがめられているような気持ちがしてしまったのだと思うのです。

ご主人様は、よく理解してくださっていました。



     正しい事も、場合によってはお教えしないほうが、

     お客さまにとっては気持ちが良い場合もある、

     ということを学びました。



宿泊代以外に300円多く取られていると、

入湯税のことを間違いじゃないかと連絡してくる場合もあれば、

入湯税をいただかせていただきますと伝えたら、

「この前も言われたよ」と機嫌を損ねるお客さまもある。



     まことに接客の仕事は難しい。



それでも、クレームが発生すると、

そのあとにかかる時間とストレスはものすごく大きいもの。



     今回の出来事は、今迄には無いほのかな喜びでした。



誠心誠意という姿勢を忘れずに、お客様に感謝したいと思います。





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◆素顔の女将◆


1999年10月10日が、このメルマガの創刊日。

と言うわけで、満13年を経過し本号で14年目に入りました。

パチパチパチ! おめでとう!

明日は、再婚15周年の結婚記念日♪~

どちらも、皆さまからのお祝い、受け付けてます(爆)

                            (by aruji)
10月2日
315号
◆ お葉書をいただける宿 ◆


皆さんは、ご自分が過去に泊まったお宿名を鮮明に覚えていますか?


場所とか建物の大きさとか、何かしら覚えているかと思いますが、

大概は忘れてしまうのです。


そういう私も、この仕事になるまではやっぱり覚えていませんでした。

今でもレストラン名は、ちっとも覚えられません。

覚えているとしたら、

やはり店から何らかのアクションがあるからなのでしょうね。

しかし、今はネットの時代。DMのリターン率も低迷しています。

結構な費用を掛けて葉書を作り、郵送代を掛けて戻りが少ないと、

結局葉書自体を出さなくなります。



紋屋も、葉書自体のコストを下げ、

係や私からお礼状を一時は懸命に出していましたが、

なかなか書ききれず、最近はめっきり数が減ってしまいました。



だからこそ、書く葉書は印象に残るものにしようとがんばってはいますが、

本当にそれだけに集中しない限り、

段々事務仕事が増えつつあって、むずかしさを感じずにはいられません。



それでも、本日ご結婚の報告葉書をいただいたのです。

昨年の夏に入籍後、紋屋に来るとメッセージがあっていらした方です。

その時もご入籍後なのでご夫婦な訳ですが、

きっとご本人同士では、まだカップルの気分だったのでしょうね。


昨年8月12日にどうしても入籍したかった、とおっしゃっていた奥様。

今年のお葉書には、8月11日に結婚しました、となっていました。

関係は有りませんが、11日は私の誕生日です。ご縁を感じました。


    一年前にご宿泊いただいた時にも、お礼状をいただきましたが、

    ご結婚なさって、またさらにお葉書をいただけるとは、

    思ってもいませんでした。うれしい事ですね。




数日前にも、再度になったお客さまから、

3年前に泊まった時に感想を書いてきたら、その返事を女将からいただいた。

とても感激して今でもとってある、とアンケートに書いてあり驚きました。


年をとって何かと仕事は増えているのに、能率が下がっているため、

ぐっとお礼状の枚数は減ってしまっているのですが、

何とか絶やさずにいたいと強く思いました。




また先日、今夏にシーズンスタッフとして働いてくれた一人が、

さっそく泊まりに来てくれました。それもすごく嬉しいことでした。


入れ代わり立ち代り、紋屋のスタッフが彼女と話をして、

きっと心が和んだだろうなと思えました。

本人のアンケートにも、


    これが紋屋さんの良さなんだなと思った、と書いてありました。


今夏ご宿泊のアンケートで目立ったものは、

    『建物は古いけど、それを充分にカバーしきったソフト面の充実』

と、いうような文言。私が、嫁にきてから、ずっと目指してきた形です。


それでもこのデフレにちっとも潤ってはいない。

きっと宣伝が基本的に下手なのでしょう。

どうしたら、こういう雰囲気だと伝わるように出来るのでしょうね。



今年の夏、シーズンスタッフの話で、もう一つエピソードがあったのです。



4年前に働きに来てくれていた、北海道と大阪の女の子が、

それを機会にいまでも繋がっていたのでしょう。

千葉で待ち合わせをして、紋屋に泊まりに来てくれたのです。


ご到着が遅く、私はタイミングが合わず会えませんでした。

4年もたつと、なかなかお名前を見ても、また実際顔をみても、

直ぐに「あの時の...」とは思い出さないと思います。


誰も気づかず、本人達もがっかりしたでしょう。

でも、接客が良く気持ちよく過ごせたそうです。


その後、たまたま社長の従兄弟が他の店で彼女達と偶然遭遇し、

紋屋で働いていたスタッフとわかり、駅まで送り届けてくれた。


なんともビックリ! 嬉しいことです。


大阪の彼女は、紋屋で働いていた時、

親御さんに黙って働きに来ていました。

血尿になって、ずっと心配し続けた子です。

そのときは、来ていた人数は、4人でした。

一つの部屋が広く、その広い部屋は3人部屋でした。


北海道の女の子が人気あり、

大阪の女の子ともうひとり同室の女の子と取り合い?になったようでした。

一度思い出したら、いろいろなことが心に浮かんできました。


分かっていたら、積もる話しも出来たなあと思いました。



    紋屋は、実際に働いていた人たちが泊まりに来てくれたり、

    自発的にお便りをくださったりする宿です。


こういう宿っていいと思いませんか?




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◆素顔の女将◆

「○○が無いのよ。知らない?」と、最近やたらモノが行方不明になる家内。

そのうち「あったぁ!」という事になるので、
もう歳だからしょうがないでしょう、などと冷やかしていたのだが、
先日、私もショッキングな事件が!

自宅のお風呂を沸かして、撹拌しようと 湯かき棒を探すと見つからない。


     家内にどこかへ移動したかと聞くと、知らないと言う。

     そんなはずないと、家内がお風呂場へ来て浴室を除くと、

     なんと目の前の浴槽の脇に立っていた!


夫婦して、もう歳だからしょうがない!?

                             (by aruji)
9月5日
314号
◆ 接客業は深い ◆


私は、幼い頃から、大人になったら接客の仕事に進もうと思っていました。


   しかし私の両親は、接客の仕事自体を、

   特別な資格や教養がなくても出来る仕事として、

   どちらかというと馬鹿にしていました。


   仕方なく、最初の仕事は事務職に就きましたが、

   やはり性に合わず直ぐに辞めてしまいました。


それからしばらくは懲りてしまい、仕事をする気持ちにもならなかったのです。

ところが、接客の仕事はやめたくならない。続くのです。

自分が本当に好きな職種に就くことは大事な事だと思います。


   宿の仕事は、大変さの方が増してしまい、

   すごく好きな仕事だとは言いきれません。

   でも、おそらくこんなに勉強になる仕事は、

   そう多くないだろうとは思います。


滞在時間が長いですし、衣・食・住すべてですし、範囲が広いのです。




今年の夏も、本当に色々な出来事がありました。


私共の宿には、多くのお子様方がおみえになるので、
おねしょシーツの無料貸出しをしています。

ところが今回、ご自宅からおねしょシーツを持参した方から、

「持ってきたおねしょシーツが見当たらない」というお声が出たのです。


多くの種類のおねしょシーツの在庫を抱えていますし、
いろんな所から買ってきているので、もし万が一混じってしまっていたら、
分からないかもしれない。


これは大変だ!と青くなりました。


実際は、お部屋のかたづけに入った従業員が、

(そのお客様は、連泊だったため)気を利かせて、

お昼寝用の布団におねしょシーツをしいて、シーツをかけたので、

見当たらなくなっていただけでした。



なんだ、よかった!と思ったのですが、

今後もこのようなことが発生する可能性はあります。

紋屋の貸出グッズには、すべて紋屋のものだと直ぐにわかるマークを

つけておくべきだと確信しました。

様々な、こまかな貸出しグッズが増えていくので、

その管理もなかなか大変ではあります。

が、常に小さなことにも気を配っていなくてはならないことは確かです。




また、夏の終わりになって、

結構お部屋利用のあるご昼食のお客様のご予約が

バタバタと入ってきました。

昼食だけだけど、お部屋でゆっくりしたいというお客様からの要望で、

お部屋が空いている日にかぎり、12時から15時までルームチャージ3000円で、

お部屋を利用できるプランを作ったのです。

そのプランが出来てから、もう1年は経過していると思うのですが、

今までは、特に問題や疑問は発生しませんでした。


   ところが、ご昼食にお越しになるお客様は、

   11時の方もあれば13時の方もある。


何時にお部屋に入っても、

12時から15時でルームチャージ3000円はおかしいのでは?という疑問が、

お客様の反応を見ていて湧いてきました。


   意外とプランを作るときは感じないのですが、

   実際は、いろいろと微妙な問題点は出てきます。



   それをいつも見逃さないで、今後に生かしていく。

   しかも継続していく。

   難しいですが、頑張りたいと思います。




紋屋は、いろいろと細かなおもてなしをしていることもあって、

ご要望も色々なのですが、お食事時間もそのお客様によって、

「うちはこの時間じゃなくちゃダメ」と言う場合も出てきます。

少ない人員でまわしているので、全てのご要望をかなえることは出来ない。

それでも、なるべくできないことも、抜け道を考え出し、

少しはご希望に近いものに出来るよう、日々考えたいと思っています。



今夏は、ご滞在が少なかったのですが、

チェックイン時にたいがい次の日の夕食時間までは、伺いません。

到着してすぐ明日の時間では、せわしいようにも思っていました。


ところが、次の日のお客様に確認のお電話をするので、

そのままにしておくと、ご滞在のお客様より先に、

同じ担当係のお客様のお食事時間が次々と決まってしまう場合があります。


前の日からいらしているお客様の、2日目の夕食時間が希望にかなわない。

それは、おかしいですよね。


特にお子様連れの場合は、チェックイン時に両日共伺ってしまう。

そのほうが、結果的によさそうだと考えました。


こうして書いていると、「そんなこと当たり前でしょ!」と

いいたくなると思いますが、

気づかないお店屋さんも一杯あり、

気づく事自体に関心がないところもたくさんあります。


実際、その場その場で問題が発生して気づくのです。




紋屋のお掃除は、夏の忙しい時期は、100パーセント外注の掃除屋さんです。

紋屋のスタッフでも、いろいろミスはありますが、

やはり掃除屋さんでも、仕事が出来る人とそうでない人とがいます。

基本的な意識の低さは、どうにもならない事態も頻繁に引き起こします。



夏は、特にチェックアウトが終わらないうちから、

次の日のお客様が荷物を預けにいらしたり、

着替えにいらしたりと出入りがあります。

それなのに、チェックインの時間よりはるかに遅い時間に、

ロビーの掃除機かけをしようとするのです。


ロビーは、その時間は満席になるほど、お客様でごった返しているのに。

やめさせると、毎日ロビーは掃除されないことになります。

そういう人たちにいろいろ伝えきり、完全に実行させることは難しい。




夏でも、プランによっては、チェックアウトが遅いプランもあります。

13時がチェックアウトでも、朝に長い時間お散歩に出かけるお客様は少ない。

お出かけになったお客様の姿をみた掃除屋さんが、お帰りになったと思い、

鍵を開けてしまいました。

鍵が開いているので、係も冷蔵庫に入っていた、

お客様が持っていらしていたお茶を片付けてしまった。

その上、お客様が散歩からお帰りになってから食べようと思っていた、

前日のデザートまで片付けてしまったのだそうです。

お荷物があるのに、次の日の支度の準備までしてしまった。



お帰りのときにその事実を伺ったのは私でした。


なんということ!と思いましたが、ともかくお会計も漏れがあったりして、

あたふたしてしまい、心からお詫びをして、お飲み物代を差し引いて、それ

でも、修復は難しいなとこちらもがっかりしながらのお見送りになってしま

いました。


長いお出かけもあるので、必ずフロントに確認をと次の日に言いました。

が、どこまで全員が、その事を覚えていられるのか。。。




他の旅館から、秋のご宿泊プランの案内が我が家に届きました。


その旅館では、お子様料金が紋屋とは違いました。

私が嫁に来た頃は、

小学生は大人の70パーセント、幼児は半額と決まっていました。

寝食不要のお子様も入館料金をいただいていたこともありました。

でも、大人のご料金は、シーズンによって、

ものすごく高くなることもあります。

一律70パーセントや半額でいいのかと、近年考えるようになりました。

今のところ、小学生は一律70パーセントですが、

低学年と高学年では、体の大きさも食べる量も違うのではと、

以前からお客様からもお申し越しがありました。


でも、宿泊業の常識では、

「映画館でも小学生は一律でしょ」ということになりがちです。


私が嫁にきたころから、疑問を持っていましたが、

今のように細かなおもてなしをしていなかったその頃の紋屋では、

私の疑問は一笑にふされました。




時代は変っていくのだから、

宿泊業もどんどん考え方を変えていかなければならないのです。

それは、大変でもありますが、楽しくもあります。



上げ始めたらきりがないほど、こまごまとしたことで、

いろんな問題点が浮上する。

それにどこまで付き合っていくか、徹底が出来るのかで、

今後が変わっていくかもしれません。



紋屋は、きづきを忘れない宿であり続けたいと思います。




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◆素顔の女将◆


夏の間は、忙しくて習字の練習をすることが全然出来なかった家内。


   それでも夏前に出した作品は、書道誌に掲載された。

   地力が付いてきたか?

   初めて書いた字でも、なかなか「達者」と思えるような線が見える。


なんて、書道は素人なのに偉そうな批評をする私(^^;)


                             (by aruji)
7月2日
313号
◆ 久しぶりの研修 ◆


リーマンショックのあとに、震災があり、
なかなか良くならない景気の足を引っ張っています。

本当に少しづつしか進まないながらも、時代は変っていきます。

団体客が大勢押し寄せた時代から、
バブルの崩壊などもあって、急に個人客の時代になり、
大きな投資はしづらい時代がずっと続いてきたのです。


紋屋も立ち止まるわけにはいかないと、研修に行って参りました。


さすがは有名な温泉地。

私共の南房総とは大きく違い、宿の軒数も多いですし客数も桁違い。

その日も、駅には大勢の観光客の姿がありました。


今回は、紹介者を通して身分を明かしての宿泊です。


   広大な土地に広々とした建物。

   渓流沿いにあって、山の眺めも青い緑。

   目に飛び込んでくる感じが素晴らしいものでした。


全てのお部屋が広い間取りになっていて、

先代がお建てになった頃と大きく変らないとすると、

先代社長さまは、かなり目の肥えた方なのだと思います。


宿でのお迎えから最後まで、接客は非常に気持ちのいいものでした。

   エース級の係の方が付いてくださったようです。
   身のこなしや言葉運びもさすがと思いました。

   豊富な温泉、部屋のお風呂も温泉です。

   渓流を眺められる露天風呂。

部屋はすべて、2部屋か3部屋続きでゆったりしています。

私は個人的に、まだ水周りもリニュアルされていない、
古めの木造のお部屋が趣があって好きでした。


   お料理は、高品質のお肉を売りにしていて、

   ここの料理はこれだ!というべきものがあり、

   主張ははっきりしていました。


朝夕お部屋食というのも、
お部屋食が大好きな方々にとっては、何より贅沢なのかもしれません。

大浴場は過不足なく、設備的には充分な施設だと思います。


今の社長様は建築関係の勉強をなさって、
本来は宿ではなく、そちらの方面に進む予定だったそうです。

景観が悪い部屋は、広くてデザイン性のあるテラスを作り、
その欠点をリカバリー。

また、雨漏りしてかび臭い部屋は、
水があればあるほど壁が固くなるという素材を壁に用いる事で、
高価格の部屋にしたそうです。

   欠点を修復して、一番売上が上がる部屋にする。

その考えは、非常に前向きですし、
さすがは、建築関係を目指した方の考えと敬服しました。


以前大浴場だった場所を、いまは斬新な工房に変身させつつあり、
非常に興味深かったです。滞在性もぐっと上がると思います。


最後に社長様自ら町内を案内しつつ、駅までお送りくださいました。


宿は、もうよそへ売りに出そうとしていたところ、
ぎりぎりであとを継がれたのだそうです。

   悩みながらこの道に進まれた。

   よそへ修行に出かけたこともないそうです。

   まだひとり身で、心も安らがないだろうと思えました。

   同業なだけに、一言、一言私達の心にも沁みてきました。


その誠実なお人柄にも好感が持てました。

よそのおうちながら「ガンバレー!」とエールを送りたくなりました。



しかし、結果的には、私達が目指すものとは大きく違い、

特に料理面では非常に落胆せざるを得ない内容ではありました。

目玉商品以外は出来合いの品物が多く、
一昔前の旅館料理の印象を強く受けました。

恐らく、普段試食会などをなさっていらっしゃらないのではないかと。

紋屋のあるじは、

   「これ、昔うちでよく出していたな。これも昔よく使っていた」を

   連発していました。

私が嫁に来る前の団体客が主流だったころに、
よく使っていた既製品があったそうです。


建築物としては、昔は豪華絢爛だったと思いますが、
おもてなしの心を表しているものが少ないように感じました。

例えば、せっかく床の間に綺麗にお花がいけてあるのに、
洋室のお花はいけてあるのではなく、単純に入れただけ。

しかも花器は、洋室なのにとっくりでした。

お金を掛けなくても、
気遣いをお客様に感じさせる趣向はいくらでも凝らす事ができる。

そこまでは、まだまだ心が届かない。

だからこの業界の人間にとっては、
至らない部分が多く目にとまってしまいました。


私たちでも、もちろん至らない部分はイヤって言うほどあるわけで、

批判ほど簡単な事はないことも、充分承知しています。


   これから良きパートナーを得られ、

   二人三脚で宿つくりをするようになれば、

   きっと目ざましく発展すると思います。



そんな中でも、私達が思いもよらない部分に、

はたと気が付くことが数点ありました。

   テレビが地デジ化して、もうしばらくたつのに、
   私達はまだテレビ番組表を一生懸命新聞からコピーして、
   お客様にお配りしていました。

何と無駄な作業でしょう!


   お土産を持参しましたが、
   お部屋係以外に裏方さんからも、お礼の言葉がありました。

早速真似しましょう。


   部屋食なので、朝食時には布団上げがありますが、
   それを手作りの木の板に、布団を上げてくださいのメッセージが。

私達も、せっかく作ったのに、
全然活用さていないメッセージカードの活用を思い起こしました。


   座卓が古びたところは、そのままよりもクロスを敷いたほうが綺麗。

   お部屋の鍵の掛け方が、私共の貸切風呂に応用できそうでした。

   先ほども出た、水分を含むと固くなる壁材も今後利用できそうです。


いつも、
私達より何ランクも上のお宿さんばかりに勉強に行っていましたが、
たまには同じように苦労しているお宿にも行くのも、
違った発想が生まれるなと感じました。



同じように古くても、紋屋には露天もないし、広大な敷地もない。

豊富な温泉もない。やっと温泉、くらいです。

お部屋もほとんど1部屋のタイプ。

それだけ見ても、かなり負けています。


施設や温泉で負けている私たちは、
いろいろ細かなおもてなしを築きあげてきましたが、
もっともっと頑張らなくてはいけないのだと強く思いました。


   紋屋に来る事が目的になるような、

   施設が古くても圧倒的な印象を残せるように、

   これからも考え続けてまいります。


果てのない宿つくりです。やさしくお見守りくださいね。



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◆素顔の女将◆

日本最大規模の書道展・毎日書道展に、今年も家内の作品が入選しました。

今年で8年連続! あと二回で会友(無審査)となります♪~

ちなみに、家内の作品展示は、7/16~23に東京都美術館です。

                             (by aruji)
6月4日
312号
◆ スカイマーク社のサービスコンセプトについて ◆


最近、格安航空会社の競争は激しくなっています。

先日の新聞にも、スカイマーク社(以下S社)のコンセプトが紹介されてい
ました。皆様はどのように思いましたか?

個人的には、なるほどと思ったところと、
違うのではないかと思った部分とがありました。


S社のサービスコンセプトは以下の通りです。


  1 お客様のお荷物は、お客様の責任にて収納をお願いします。
    客室乗務員は収納の援助を致しません。

  2 お客様に対し、従来航空会社の客室乗務員のような丁寧な言葉遣い
    を当社客室乗務員に義務付けておりません。
客室乗務員の裁量に任せております。安全管理のために時は厳しい
口調で注意することがあります。

3 客室乗務員のメイク、ネイルアート、ヘアスタイルに関しては
「自由」にしております。

4 客室乗務員の制服、会社支給のウインドブレーカー、ポロシャツの
み義務付け、それ以外は「自由」にしております。

5 客室乗務員の私語について、苦情を頂くことがありますが、客室乗
務員は保安要員として搭乗しており、接客は行わないものとして位
置づけております。お客様に直接関わり合いのない苦情につきまし
ては、お受けいたしかねます。

6 幼児の泣き声の苦情は、一切受け付けません。航空機とは、密封さ
れた空間で、様々なお客様が乗っている乗り物である事をご理解の
上で、ご搭乗頂きます様お願い致します。

7 地上係員の説明と異なる内容の事を客室乗務員が指示することがあ
りますが、そのような場合には、客室乗務員の指示に従っていただ
きます。

8 機内での苦情は一切受け付けません。ご理解いただけない場合は、
定期運行順守のため、退出いただきます。ご不満のあるお客様は、
「スカイマークお客様相談センター」あるいは「消費者庁消費生活
センター」へ連絡されますようお願いいたします。


というものです。


サービス業に従事しているものとしては、驚きでした。

要するに、安全に定時に安く人を運ぶ輸送業であり、
サービス業じゃないよ、と言っているのだと思います。

私は、以前にも輸送業について書きましたが、
やはりどんな職種でもサービスはある程度必要だと考えています。


   飲物のサービスがない。それは料金に準ずるものと思います。

   座席が狭いのも、安ければ仕方ありません。

   出来るだけ料金を下げるために極力制服を設けないのも、
   荷物の収納を手伝わないのも、
   人件費や運営費を下げるためには仕方がないでしょう。


しかし、ある程度の規則は必要なのではないでしょうか?

言葉遣いも、最低限度のレベルはサービスでなくても、
社会人として当然です。

教育費を多く設けなくても、
本を渡して試験を行うくらいは出来ると思います。

まして私語ともなると、
安全にお客様を運ぶための保安要員だから見逃せというのは
おかしい論理です。

メイクやヘアスタイルについて厳しく制限があるのは、
私も感心はしませんが、常識の範囲であるべきなのではと思います。

お客様に対して、堂々と書き連ねる事ではないと考えます。


   要するに、サービスよりも安くが一番という方が、

   我が社のターゲットと言う事なのでしょうね。


私は、選びません。


そうは言っても通常の価格帯の航空会社のサービスも、
私は個人的にあまり好きではないです。

温かみがないというか、型にはまりすぎている印象を強くうけます。
教育システムにも、航空会社特有のカラーがあるのでしょうね。


S社は、サービスコンセプトというより、サービスはないのですから、
安価な輸送業でサービスはしませんよ、と発表した方が
よさそうな気もします。

利用する方は、それなりに覚悟して乗るでしょうし、
S社の乗務員は気が楽でいいかもしれません。



では、日本旅館はどうなのでしょうか。


一人1泊5、6千円で食事も付く旅館ホテルもありますが、
どんな方々が何を求めて足を運んでいらっしゃるのでしょうか。

また受け入れる側も、どこまでのサービスをしているのでしょうか。



日本の宿のサービスは、総じて海外に比べてレベルが高いといわれています。

あるお客様は、日本の宿のサービスレベルは特筆するに価するとも
おっしゃっていただきました。

私が目指している本当にやりたいサービスは、
高級旅館のような特上のサービスなのです。

でも、紋屋は普通の宿の料金帯。建物も古いです。

建物が古い分、
どうしても基本料金は普通の宿の範囲を超えることはできません。

ソフト面で建物の不便もカバーできていると、
お客様からもおっしゃっていただいていますが、
よくよく下調べをなさらないお客様や、趣味に合わないお客様からは
踏んだり蹴ったりの事もあります。


   ケースバイケースなのでしょうが、

   S社のように「○○はしない」とはっきり言ってしまうのも、

   たまには必要なことなのかもしれません。


私は、個人的にはどんなに格安なプランでいらしても、
そのことだけで特別差別をしたり区切ったりと言うことは嫌いなのです。

サービス業である限り、いただくご料金に対してサービスする。

それが基本である事は確かです。

お客様の中には、
なるべく安くただで何でもしてもらえればラッキー!と言う方が、
多くいらっしゃるのも事実ですね。



少し前に、「生理用品置いていますか?」と聞かれたことがありました。

聞かれたスタッフが売店に見にいくと、たまたま切らしていました。

そこで夕方から来るスタッフに買ってきてもらったのですが、
「売店にご用意致しましたよ」とお伝えしても、
「いいです」とおっしゃったそうです。


   要するに、以前どこかのホテルか宿で、

   無料でくれたところがあったのでしょう。


心配して損したねと、スタッフ同士で嘆きました。

そんなこともちゃっかりしたお客様には、時々有る話です。



紋屋では数年前からお祝いに自然に力が入るようになって来ました。

実際、結婚記念日やお誕生日、長寿の祝などでお越しの方は多いのです。


   出来る範囲で、なるべくコストをかけない形で、

   私達が無理なくして差し上げられることを、

   会議を重ねて考え出し、

   気持ちばかりのお祝いをして差し上げています。


そして、お祝いのプランの場合は、
極力それ以上のことが出来るように心を注いでおります。


お祝いプランに限らず、
宿泊名簿に書いてあった誕生日が近いと分かった時や、
会話の中で分かったという場合、
もともとメッセージに誕生日のお祝い旅行と書いてある時。

もちろんそういう時は、大いにおめでたく嬉しい事なので、
こちらも接待して差し上げたい気持ちが大いに盛り上がります。


お客様のほうから、

   「あした私の誕生日なんですが、何かありますか?

    シャンパンが出るとか。」

と請求してくるのは話が違います。


なんでもプラス料金をいただくというのも、
以前、私達がお祝いプランで人気のレストランに行った時に、
いやな気持ちになったことがありました。

私達がしていることは、ほんの些細なきもちばかりのことです。

それは、手間はかかります。

でも、シャンパンを出すことよりも、
心がこもっていることをお分かりいただけたら嬉しいですね。


人間対人間。お互い気持ちよく過ごしたい。


様々なお客様を察してお迎えすることは、
楽しい事でもあるのです。



以前、ものすごくアレルギーが強くて食べられるものが少ないお客さまが
いらっしゃいました。


   たんぱく質が全くダメと言うことで、

   肉も魚も普通のご飯も豆腐もダメです。

   食べられるのは、野菜のてんぷらとか煮付け、炒め物だそうです。


最初は、暇な時期だったので、出来る範囲でと受けました。

調理長がそのときは、
一生懸命作って全部食べられるようにして差し上げたのです。

お客様は、大変お喜びになり、何度もお越しになられました。

ところが、忙しい季節になり出来ないと申し上げましたら、
それ以来このお客様は、お越しにならなくなりました。

忙しい季節は出来ませんがと、一番初めにお伝えするべきでした。



こうして、サービス業は失敗と成功を繰り返しながら進化していくのです。


今回S社のサービスコンセプトの発表は、論議を呼びそうですね。

いろんな考えの会社があって、選ぶのは自分です。

良い会社選びを皆さんもなさってください。




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◆素顔の女将◆


家庭も仕事場も一緒なので、生理的なサイクルが似通ってくる。

トイレに行こうとすると家内とタイミングがあったりすることが多いのだが、
自宅のタンク式トイレだとすぐには水が溜まらないので、
どちらが先に入るか、もめたりする。

そのとき家内は、決まって

   「あなたは男なんだから、外で立ちションしてらっしゃい!」と

私に軽犯罪実行をそそのかす(笑)

                             (by aruji)
5月20日
311号
◆ 人とのつながり ◆


よく出かける美容院や病院、百貨店のなかの各店を、
皆さんはどのように選んでいらっしゃいますか?


     私にとっては、やっぱり場所です。

     自分が出掛けやすい場所にあること。

     技術が確かなこと。

そのふたつだけで選んでいる事も少なくありません。


でも、本当はそれにプラスして、
そこにいる人たちとの会話や交流がものすごく満足感に影響する。

それはいつも改めて思う事です。


私は長年お世話になっていた、あるお医者さまを、
転勤があるたびに少しくらい不便でも、追いかけて治療を受けていました。

信頼していたからです。

でも、その先生がさすがに遠くて追いかけられない土地に移られてからは、
仕方なく場所だけで選んでいます。


足が悪い私には、一人で列車に乗って行ける場所と、
あまり多く歩かなくて済む駅から近いという条件が必須でした。

     以前お世話になっていたその先生は、

     ご自分の奥様が生きるか死ぬかの瀬戸際でも、

     私が具合悪いと毎日電話を下さいました。


今の先生は、悪い方ではないと思いますが、会話が少ないのです。

患者の話をゆっくりうなずいて聞いてくださること。

ご自身の感情も少しは出して、
笑ったり、時には怒ったりしてくださる方のほうが人間的です。

それがないので、いつも診察はすごく早く終わり、
特に風邪やインフルエンザが流行っていなければ、
いつもとてもすいています。


     ゆっくり会話なさる先生がいらっしゃる病院は、

     たいがい人気があってすごく混んでいます。


その医院は、待ち時間が少なくてすごく楽。

それはいいのですが、
なんとなく消化不良みたいな気分が残るのです。

病気と言うものは「病は気から」と言われている通りに、
その人の性格や仕事の内容、様々な周りの環境などが強く影響するのです。

     そのためにも、日常の会話が大事なのです。



私の足の治療は、3箇所も通っていますが、
メインでお世話になっている先生も、
最初は、あまり信頼できないかもと思っていましたが、
いつの間にか心が通うようになり、
最近、先生は私の性格も周知なさっています。

急に具合が悪くなっても、
(『日本の名医』と言う本にも登場する方なので混んでいますが)
たいがい予約なしで入れてくださいます。

なので、出かけた後はほんの少しの時間の治療なのに、
消化不良にならないのです。



美容院も普段忙しい私には、立地が一番。

時間がかかりますし、頻繁に利用します。

技術も信頼できなくては困ります。

時間に余裕がない時にうまく調整し、
ほかの担当者に一部をお願いしている間も、
目を離さずにいてくださること。

もちろん、最初から最後まで全部担当の先生がなさってくださるのが
一番でしょうが、ほかの方々との気軽なおしゃべりも結構楽しいもの。


     自分から心を開いて、

     店の方々と接するのも大事なように感じています。



百貨店や各店舗の店員さんとの語らいは実に楽しいものですが、
「心」あることが大事。

単純にほめればいいと思っている方が多いような気がします。


心ない「ほめ」は、単純なごますりになるので、
客側はいやな気持ちになります。

それが出始めると、私はもうその店には行きません。

最近の若い店員さんたちは、
妙に鼻に掛けた「いらっしゃいませ」をいうので、
それだけでげんなりすることもあります。

私だけでしょうか?



接客業でなくても、人と接することがない場所は少ない。

人と人が接するときは、ほんの一瞬であっても、
機械的ではない印象に残るその時どきであってほしい。


私は、機械的な対応がどうも好きになれないのです。

市役所など公務員系の方々も、非常に事務的なことが多いです。
公務員は、公僕の立場にある職員さん。

それを意識している職員さんは、どれくらいいらっしゃるのでしょうか?

市役所の住民課など、ひどく事務的です。笑顔なんて先ず皆無。

手数料を取っているのに係わらず、その対応はひどいです。


私が以前住んでいた東京都下の昭島市は、私が知っている限りでは、
もっともにこやかで温かい接客が出来る職員さんが多いと記憶しています。

本当は、それが普通のはずです。

どこの市役所でも、そのようであって欲しいですね。



紋屋のあるおなじみ様は、保育園の園長さんでいらっしゃいます。

もちろん公務員さんです。


     そこの保育園では、有名ホテルのコンセルジュを呼んで、

     「NO」と言わないサービスについて講演があって、

     職員さんが学んだそうです。


それには少し驚きましたが、今は、そういう時代だと私は思います。


以前にも輸送業に関しては書きましたが、
どんな職種でも、人と全然接しないという仕事はあまりないです。

今は、インターネットが普及し、
フェイスブックもすごい勢いで世の中に浸透しました。

昔の世の中とは違うと思いますが、
ネット上でなくても、結構この世間は狭いものです。


以前、売店においている品物の業者さんが、
ご実家が昔私の住んでいた家の目の前にある薬屋さんだったと
分かった事がありました。

前職で勤めていたとき、一人のお客様のご実家が、
紋屋の元従業員の隣の家の人だったということもありました。


     人はいろいろなところで、

     結局つながっているのだと、私は思うのです。



昨年「絆」と言う言葉が注目されましたが、(聖書ではありませんけれど)
隣人を愛し、人に優しく出来たらと思います。

昨年、大震災が発生し、まだまだ余波が続いているにもかかわらず、
人と人をつなぐ絆は薄くなりつつあると思います。

人とのつながり、大切にしましょう。


紋屋にも、今日お越しになるお客様と良い出会いを待っています。



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◆素顔の女将◆

ダイエットのために、朝以外、
甘いものやフルーツを取ることを控えている家内。

それを忘れていた母が、昼食時にスイカを出した。

     もちろん家内は食べないと言ったが、その後で、

    「でも、桃と洋ナシとビワとサクランボは食べる」と

     例外品目がゾロゾロ。

真剣にダイエットする気があるのかどうかは不明(笑)

                             (by aruji)
5月6日
310号
◆ 毎日が良い日 ◆


今年のゴールデンウィーク、皆様はどのようにお過ごしになりましたか?


昨年は震災の後で自粛ムード。泊まりよりは日帰り。

高いよりは安く、遠いよりは近くだったそうですが、
今年はその反動もあって、大型連休をとって海外と言う方が多いとか。


紋屋のゴールデンウィークは、
おかげ様で昨年一昨年よりも好調でした。

お客様のご様子は、
ようやく通常に戻ったという感じが強かったように思います。


喉元すぎた頃に.・・・ということもあるので、
気をつけなければいけませんが、
震災を踏まえながらも前に進まなくてはならないので、
旅行にお出かけになるお気持ちは持っていただきたいと思いました。



ご住所を拝見して、

「このお客様は、仮設住宅にお住まいだ」とわかると、
普段は受けていない事もして差し上げました。

お子様が少し熱っぽいということで、
いつもは承らないお部屋出しを特別に受けたのです。

それが、仮設住宅を踏まえての事だとは、
きっとお客様には伝わらなかったと思います。

それでも、どこかでその気持ちの端が伝わったら嬉しいのですが・・・


このゴールデンウィークにも、
福島県のいわきからお越しになったお客様がいらっしゃいました。

独特なイントネーションから、そのお客様が福島の方だと直ぐ判りました。
(以前、福島にいた事があるので)


お子様は、1歳になったばかり。

1年前はいわきで地震にあわれたのではと、


思わず 「大丈夫でしたか?」とお聞きしてしまいました。


なんと、近くの病院がいっぱいで横浜のご実家にいらしたのだそうです。
それで免れたとのこと。


   「本当に良かったですね」と心から申しあげました。


人間の運命なんて、一寸先は闇。
ほんのちょっとしたことで、明暗が分かれるのですね。

それでも(もちろん伺わなかったですが)福島にお住まいということは、
少なからずご心配だろうと思います。

元気にお育ちのお子様を拝見しながら、横浜でよかったと何度も思いました。



禅の言葉に日々是好日と言う言葉があります。


毎日良い日であるわけはない。
でも、どんなに辛い事も悲しいことも、意味があるのだそうです。

苦しい出来事から受け取れること、学ぶこと。きっとあるのです。

悲しい気持ちの中にも、ひとすじの光が差し込んでくる。

その光を自分の中でよい事にかえていく。

前向きな気持ちが大切ですね。



中森じゅあん という方の書いたもので次の詩があります。


     朝がくるとはじめてのこころになれる

     ときにしおれた気分で起きても

     どんな困難のさなかにあっても

     朝こそは新しいめざめのために来る


という詩です。

私はこの詩が好きで、書道作品にして飾ってあります。

アンケートで、
この詩に感動したというご意見もいただいたことがあります。

私も、この詩のようでありたいと思います。


館内の書作品は、比較的暇な旅館内での時間を、
すこしでも気軽に楽しんでいただくために飾っています。

作品自体は、けっして上手いものではありませんが、
書家に習ってやっと11年が経ち、最近、やっとお祝いのお客さまに
ちょっとだけ字を書いて差し上げることができるようになってきました。

上手くなくても、
心を込めてその方だけのために、一生懸命お書きするのです。

それが伝わるといいなあと思います。



先日いらしたある親子様は、
お母様が読売書道展で出品なさっている方で、
お嬢さんは、絵を描いているという方でした。

私の書道は毎日系なので、どちらかというと絵画的です。

娘さんは絵心があるので、
私の作品からいろんなことを受け取ってくださいました。


月の形に仕上げた作品を楽しんで見てくださり、「雨」と書いた作品を、


     「小さな子供が雨道で遊んでいるように見える。」


とおっしゃっていただきました。実はそんな気持ちで書いたものでした。


出会いは楽しいものです。

もしかしたら一度しかお目にかからないかもしれませんが、
大事なその1回を思い出深いものに出来たらと思っています。



震災以来、いつどこで大きな地震が発生しないとも限らないので、
なおのこと、一日一日を大事にしたいものです。

だからこそ今は自粛ではなく、
今日与えられた一日を思う存分楽しんでいただきたい。


毎朝、新しい一日が迎えられた事を感謝し、
いやな事があっても、その中から良いことをさがす。

良いことに変えていく。


日本が新しい震災後の画期的一歩を、本当の意味で歩みだせることを、
今回心から願った大型連休でした。



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◆素顔の女将◆

某大臣が某知事に事情説明しているシーンをTVで見た家内は、


「なんで、テーブルに携帯電話があんなに置かれているの?」と、聞く。


      何でだと思う?    それはね.....


記者の携帯ではなくて、あれはICレコーダーだからだよ(笑)

                             (by aruji)
4月22日
309号
◆ 家族時間 ◆


私は、前職(百貨店勤め)のときから、
心の通じる大事な顧客様との心の触れ合いを大切にしてきました。


   売上を上げると言う単純な行為に終始するのではなく、

   もっと深い心の結びつきを重視し、

   決して「売ろう」とするのではなく、

   お客様の立場や気持ちになって接客するのです。


お客様のほうでも、商品の話にとどまらず、
家のことやら仕事のことやら、私と世間話をしにお越しになります。

そういうことが私にはとても嬉しいことでしたし、大事にしてきました。


   旅館は百貨店とは大きく違い、

   お客さまの方で宿を選んでいらっしゃるので、

   お越しのお客様が気持ち良くお過ごし頂けるように、

   少し遠くからお見守りします。


そのために、親しくなるのに多少の時間はかかりますし、
何度いらしても、心が通じないお客様もいらっしゃいます。

もちろん、人間ですから相性というものもあります。

それでも、多くのお客様と段々にいろんなお話が
出来るようになっていくことが多いです。

そして、おなじみ様と呼べるほど何度もお越しいただくその中には、
百貨店時代と同じように、
強い心の結びつきを育めるお客様もいらっしゃいます。



先日、ここ2年くらいお越しになっていなかったあるおなじみ様が、
久し振りにご来館になりました。

いままでどんなに足繁く通ってくださっていても、
来る、来ないはお客さまのお考え。

文句を言える立場でもないし、
プッツンといらっしゃらなくなっても、
それは仕方が無いことです。


   お客様側の事情が変わる、もしくは気分が変わる。

   こちらに対して気にいらないことが発生してこなくなる。


色々ではありますが、良い出逢いがあれば別れがある、
それは道理でもあります。



今回お越しになったお客様は、
毎年、年賀状もお出ししている親しいお客様でしたが、
最後にお越しになったとき、私は不在でした。

私は、平日は多くの通院や習い事、
セミナーなどで忙しくしていることが多いのです。

でも、私がいないことで、
結構なおなじみ様がその後全くいらっしゃらなくなったり、
来館頻度が落ちたりという事象がある事は事実です。

忙しい土日や祝日にいないことは滅多にありませんが、
多くのおなじみ様や、またはじめてのお客様でも、
私に会いたい方はいらっしゃる。

それに最初の頃は合わせていましたが、
それでは私の生活が全く成り立たないので、
割り切る事にしたのです。


でも、おなじみ様にとってはそのあたりが大きな落胆になるようです。

しかも今回のおなじみ様の場合、
その最後のときに、会計ミスがありました。

その上、会計ミスはその前のときにも発生していたのです。


そんな出来事も、紋屋との歴史に新しいページができたと
おっしゃっていただいたのですが、
きっと気持ちの悪さは残っただろうと感じていました。


そして、その後2年間お越しにならなかったのです。



今回お越しになってすぐに、

   「ごめんなさいね、ずっと来なくて」と謝られました。

   奥さまは私の手を握り締めてくださいました。

私も、嬉しさが胸をこみ上げました。


ご夕食のとき、ご挨拶がてら個室ブースにうかがうと、

この2年間に起きた出来事、去年の震災の話。

本当に次ぎから次ぎへと話は続いていきました。


   来なかった理由の一番は、
   たまたま趣味のガーデニングの展示会に出掛けたところ、
   全国にホテルを持つ会社のオーナー制度の誘いがあり、
   それのオーナーになったことだそうです。


出掛けないと、ポイントが無くなる?とかで、
北海道やら沖縄やら、京都だと忙しくお出かけになり、
こちらにくる暇がなかったとのこと。

ホテルはキッチンがついており、自炊するのだそうです。

ホテル内にはレストランもあるそうですが、もちろん別料金だとか。

「そういう制度を利用しているという友人もいたなぁ」と思い出しながら、
お話を伺っていました。



2年の間にご主人様はヘルニアになられ、
スポーツが大好きな方なので、
家の中の空気が暗くなった話も聞きました。

以前にも、家の屋根から落ちて、大怪我をなさったのです。

それから奇跡的な回復をなさったのですが、
さすがに今回は、歩き方がすこしおぼつかない感じがありました。

お互いに痛いところがあって、整形外科にお世話になる身。
そのあたりでも話は尽きません。

奥さまが気遣ってくださって、椅子を私用に用意してくださり、
まるで家族のように団欒の時間を持つことが出来たのです。



ご主人様は正直に、
2回の会計ミスのせいもあることを認めていらっしゃいました。


   でも、何があろうとこうして再会し、

   話ながらお互いに涙して喜び合えたことは、

   2年間の空白を埋めるに足る、心の通い合いの証でした。


もちろん、今回はミスがあってはいけないと、
当日の手配表(ゲストインフィメーション)に
「2回過去ミスがあった。厳重注意!」と書いておいたものの、
フロントはイマイチ緊張感がなさそうでしたので、
自分で領収書を確認しました。


   「1年に5回も来ることがあったのに、急に来なくなる。

    それは良くない」と、ご主人様。



嫁にきて15年。


最初は親ほどに違う年齢の従業員たちの中で、
すこしづつ宿を改善してきた私。

そういうなかで、築き上げてきたおなじみ様は、
私にとって特別なものなのだと、改めて実感しました。


   私は、やっぱり心と心をつなげるお客様をつくり、

   その方々にとっても忘れることが出来ない「私」になることが、

   私の仕事上の幸せであり、

   お客様にとっても「私」の存在が

   何かしら幸せのエッセンスであったら、

   この上ない喜びです。



そのおなじみ様とのご夕食のひとときは、私にとって、

それはそれは温かな気持ちになれた「家族時間」でした。




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◆素顔の女将◆


「この懐中電灯壊れてる!電池、入れ替えたのに点かない」と家内が訴える。

蓋を開けると、中には単4の電池が入っていた。


     「単3じゃないの?」と聞くと、

     「単3だと蓋が閉まらないのよ」と言う。


試しに単3の電池を入れて蓋を閉めてみると、フツ~ウに閉まる。

電池の入れ方が違っているのはよくある事だが、
電池自体の選択を間違えるってのは、フツ~ウじゃない(笑)

                            (by aruji)
4月8日
308号
◆ 食事のあり方 ◆


最近、コンビニ業界もスーパーマーケットも、様変わりつつあるそうです。

確かに、近くのあるコンビニSは、最近お惣菜にうんと力を入れて、
お弁当以外にも、ちょっと買ってみたくなる一品が揃うようになりました。


ちょっと割高かも知れませんが、
全てを毎日コンビニにするのでなければ、結構便利。

利用の仕方を工夫すれば、材料をそろえるよりも安いかもしれません。

特に最近は一人世帯が多いわけで、時代を先取りしていると思いました。

地域によっては、配達も受けているとか。
一人暮しのお年寄りにとっては、配達は何より有り難いことでしょう。



反対に、スーパーは、今までのなんでも揃う形にこだわらず、
一部のものにこだわって品揃えする店も。

あるスーパーでは、高級志向の品揃えにこだわり、
多くのファンを持っているそうです。



そうした話を聞いたり見たりしていると、
宿屋もなんとか新しい発想で、おもてなしをしていきたい。

もっと斬新に変われないものかといつも思います。

   例えば美容院併設の宿とか、

   紋屋だったら、保育園併設の宿にして、

   町内のお子様連れのママさんたちにご昼食にお越し頂くとか。


私も、子供が幼稚園のとき、
頻繁に近所のホテルの昼食バイキングを利用していました。

そうはいっても、なかなかそこから発展しない。
変わるには膨大な資金が必要なのです。難しいですね。

保育園だって、設備投資やさまざまな登録が必要ですし、
保育士さんを雇ったら、高くついてしまいます。

あれば、シングルマザーも働きやすくなるのにと思いますが。。。



お金の投資がなくても出来ること。

なかなか無くて、結局普通の旅館になってしまう。

せめて、お献立くらい新しい発想で作りたいと、
常に調理長と社長おかみを中心に取り組んでいます。


   勉強の為に、最近行ってみた料理屋さんは、

   最初は本格的日本料理で、そのあと創作系の一品が出て、

   そのあとにフランス料理、

   そしてそのあとお食事がそばという珍しいスタイルでした。


日本料理なのにフランス料理のメインが出る。

そのあとに食事がおそばというのは、さすがにまいりました。
そして、そばの後がまたフランス料理のデザート。

おいしいことは、美味しいのですが、ちょっとだけ戸惑いましたね。


   私だったら、おそばは凌ぎとして早めに出して、

   その後に創作系の料理、そしてフランス料理、

   お食事はパンかあるいはリゾットなどにして、

   お口直しにシャーベット、

   そしてデザートのほうが受け入れやすいかなと思いました。


作る側も、おなじ日本料理ならそれだけというものに、
物足りなさを感じるようになりつつあるのでしょうね。

その店の店主は、最初がおそば屋さんでの修行、そして日本料理。
それでも飽き足りなくて、フランス料理も学んだのだそうです。



後日行ったおでん屋さんは、関東風でも関西風でもないおでんで、
出汁にコンソメを使っているそうです。

日本酒ではなく、ワインが揃っているのです。

そして、最後のデザートはなんとクリームブリュレでした。


   同じおでん鍋から出てくる一品一品、

   付け合せの辛子やスパイス、

   またおでん種の上にのっている食材のせいで、

   すべて味が違うように感じるのです。


なかなか美味でした。

デザートは何故?と思いましたが、
やはりフランス料理を経験しているそうです。



食べる側だけでなく、作り手も発想が違ってきているのですね。

さまざまなニーズがあり、いろんな情報があふれている昨今。


日本料理なら、それ一辺倒。

それでもいいし、そうじゃなくてもいい。


そうしたことから、

紋屋でもシュハリという独特なお料理コースが生まれました。

非常に創作性が高く、お料理の順番も工夫しています。

デザートは常に2種類。

お刺身も普通の刺身のほかに、変わり刺身が出る。

私は、このコースが大好きです。



お客さまのほうでも、
ホテルと旅館との区別がつかない方も、段々多くなりつつあります。

日本料理なのに、メインがないというお声も時々頂きます。

(日本料理の基本は、メインと言う考え方は無いのです)

日本料理のきまりはきまり。

それでいて、新しさが醸しだされていれば、なお結構。

というところでしょうか。



紋屋では、

お客さまが多い日はご朝食をハーフバイキングにさせていただいています。

それでもぞんざいにならないよう、名物のまご茶漬けは残し、

お味噌汁も、お客さまにジャーからついで頂くのは、

悲しいものがあるので、ちょっと工夫しました。


京都からわざわざ取り寄せた逸品の「最中の皮」。

あとは手作りで出し入りの味噌や葱などを詰めました。

けっこう手間がかかります。

それをおわんの中にいれて出汁を注いでいただくのです。


    香ばしい最中の香りと手作り味噌のハーモニー。


あまり伝わっていないのか、
全然その美味しさへのお声を頂けていませんが、
私たちの伝え方が下手なのだと思います。

中にはインスタントの味噌汁だと思ってしまうお客さまもあり、
非常に残念です.....。



器も頻繁には取り替えられませんし、出来ることは少ない。

でも、その少ない中から日々考えに考え抜き、
紋屋の料理は常に新風が吹いているようにしたいものです。


普通の旅館料理-

     さめている天麩羅

     変わり映えのしない盛り付けのお刺身

     あたたかものは茶碗蒸しと鍋

     品数だけは並びきらないほど.....

そういう普通(?)の旅館料理を紋屋は目指しておりません。



お分かりいただける方は、ものすごくご理解頂き、感心してくださる。

少しでも多くの方に共感していただけると嬉しいです。


これからも努力して参ります。

どこか、参考になりそうなお店がありましたらお教えください。




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◆素顔の女将◆

年に一度、検便が行われるが、便秘症の女将はいつも憂鬱顔。

努力の甲斐あって無事に処理できると、ニコニコ嬉しそう。


ところが突然思い出したように、

   「検便って憲資(私のこと)の便のことだ(=憲便)」

   「憲太郎(息子)の便だ。憲真(孫)の便だ!」と、

なんだか訳の判らないことで一人で大はしゃぎ。


そう言うあなただって、洋便(葉便)じゃないか!

                            (by aruji)
3月25日
307号
◆ はじめての講演会 ◆


2月のはじめ頃だったか、

ある旅行エージェントさんから、講演依頼を頂きました。



紋屋の社長なら、ある程度大勢の前で話をするのも慣れています。

私は、人前で講演するなど到底出来るはずがありません。


     「無理です。」


と申し上げたのですが、そこをなんとかと頼まれてしまいました。



もしかしたら講演を機会に、自分の中で芽生えるものが出来るかもしれない。

経験が無いからこそやってみる価値があるのでは?と

心のどこかで動くものはありましたが、やっぱり自信はありません。


でもまだ時間はたっぷりあるしと、そのときは思いました。



     しかし、時間はあっという間に過ぎていきます。



気がついたら、講演日がすぐそこに迫っていました。

もちろん自分なりに講演の骨子は考え、

だいたいのストーリーは組立ててみました。


     問題は、話し方です。


どうしても、声のトーンが一辺倒になりがち。

何度やってみても、聞く側が眠くなりそうです。



社長に相談すると、


     「まずは、話の内容なんじゃない?私を相手に話してみて」

と言われやってみました。


やっぱり、おもしろくありません。


講演の参考になるかもという本も貸してもらいましたが、

いまいち講演の参考にはなりませんでした。



     「何を話すかをもう一度考えてみたら?

      メルマガを読み返してみたら?」


私がメルマガを出すようになったのが、1999年の10月。

そこからお話するのによさそうなものをピックアップしようと、

読み始めました。

膨大な量ですが、その中でも良く書けたものは自分でも分かります。

自分が書いたものでも、久し振りに読む文章は非常に新鮮。



     こんなこともあったなぁ、と感慨にふけります。



また自分で言うのもおこがましいのですが、良いことを書いています。

そうだったなぁ。

数々のエピソードの中から、

お話するのによそうなものをいくつかピックアップしてみました。



そして、実際に声に出して話してみます。

やっぱり、話し方が難しい。

講演がお仕事の方は、よくよく研究していらっしゃるのでしょうね。

とにかく単調にならないようにするには、どうしたら良いのか。



社長からは、

     「間を置く。声のトーンを変える」と、

アドバイスを貰いましたが、

本番もやっぱり思うようには出来なかったように感じます。



お越しになる方は、商工会議所のサービス部会の方々。

業種はさまざまですが、経営者のかたがたばかり。

私などが皆様に参考になるようなお話など出来るでしょうか?



いよいよ日にちが近づいて、後がなくなってきました。



社長と毎晩遅くまで、エピソード選び。

実際に声を出しての練習。

話す内容もやっと決まりました。


毎晩遅くまでの話し合いで、すっかり寝不足。

体調が悪くなりそうでした。


本番の日、少し頭痛がする中、早めの起床。

想像よりは緊張してないかなと思いましたが、

血圧を計ったら150もありました。



     やっぱり緊張している!



あとは、もうやるしかない。

話す前は何度もエピソードネタのメルマガに目を通し、

トイレに何度も足を運び、とうとうその時がやってきました。


意外と声が上ずったり、心臓が飛び出したりはしませんでしたが、

思い通りには話せませんでした。


     話し方は40パーセントの出来。

     内容は55パーセントの出来。

     というのが私自身での採点。


けっしてうまくなかったけど、初めての割には落ち着いて話せました。


きっと商工会の部長様が気を使って、

ある程度は質問を用意してくださっていたように思います。


ただ、それ以外にも御質問を頂き、

講演30分、質疑応答15分、雑談10分という時間配分で、

なんとか無事に終了しました。



お帰りのまえに、御入浴の方もあり、入らない方は売店でお買い物。

     そのときに、おひとりおひとり、名刺を持って、

     感想を伝えに来てくださる方があり、

     本当にありがたく思いました。


そして、全員で記念写真。


今回は、私がずいぶんと心配したために、一部の方はお電話を下さり、

またお二方は、事前に泊まりに来てくださり、励まして下さいました。


      有り難いやら、情けないやら。



最初に、私のメルマガの読者である旅行会社の方が、

皆様に私のことを奨めてくださったのだそうです。

私のほかにも二人、候補があったそうですが、会議で私になったそうです。



     部長さまは、「お人柄ですよ」とおしゃって下さいました。



経営者の方々を相手に、私ごときが偉そうに講演だなんて...




でも、私の話がどうのというより、部長さまは、

「どんな話をしても、受け取る側の問題なんですよ。心配することはない」

とまでおっしゃってくださいました。


貴重なお時間をさいていただいて、

私にとっては忘れられない出来事となったのです。



旅館に嫁がなければ、また、メルマガを書かなければ、

こんな機会も無かったでしょう。

さまざまな経験を積むことは、人生を豊にすると私は思います。



そして、お越し頂いた方には申し上げましたが、

初心を保つことはとても難しいことで、

最近は、お客さまを以前のようにはお迎えできていなかったのです。



久し振りに、以前のメルマガを読み返し、新鮮な気持ちになれたのです。

このような機会を与えてくださった旅行エージェントのUさまに、

お越し頂いた皆様方に、心から感謝致します。



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◆素顔の女将◆

事務所にやって来た生後6ヶ月の孫が、
机の上にある計算機を取り上げて口に持っていこうとする。


       「なめちゃダメ。これは計算するの。

        ほら、すごい数字になったでしょ?」


と、家内が孫に話しかけるが、“計算”も“数字”も判んないと思うよ(^o^)

                            (by aruji)
2月28日
306号
◆ いつまでも持ち続けたい気持ち ◆


小さい時から、私は大きくなったら必ず接客の仕事をすると決めていました。

その気持ちは今も変わりません。



     しかしながら、旅館業という職業は、

     接客の仕事の中でももっとも難しい世界だと感じます。



時間が余りにも長く、ご滞在の間に一つでも間違いがあれば、

(料理に髪の毛が入っていた。会計ミスがあったなどなど)

それまでの良い気分がすっ飛んでしまうのです。



それでも逆に難しいからこそ、その一場面一場面で、

考えさせられることが非常に多い仕事場だとも言えます。


長くこの場にいて、苦しいことばかりが続くと、

もう旅館業は嫌だと思うこともしばしばですが、

今回は、そう思いがちな私に、久し振りにやさしい風が吹きました。



私は、不特定多数の知らない方々と、はじめてお目にかかり、
笑顔でお迎えできることが幸せだといつも思います。

普通の事務職だと、たいがいは社内の方としか関わらずに過ごします。
もしくは、会社に営業に来る方など、決まった方に限られます。


     それが接客業だと、全然知らない方とも普通にお話が出来る。

     突然心が通じることもある。

     だから接客の仕事は楽しい。


こちらの笑顔にほっとして下さる方もあれば、
非常に冷たい視線を投げかける方もあります。

素敵な笑顔の方は印象に残りますが、
何か気に入らないのだろうなと伺える方も気かかりです。




今現在は、全てのお部屋やお食事処に私は足を運んではいませんが、
チェックインは、ほぼ90パーセント私が行います。

チェックイン時の印象と、お食事中の印象は違うこともあれば、
同じこともあります。

その日にお越しになるお客様の状況を
全体的におおよそつかんでおくことは、大事なことです。


日によって、今日は今ひとつ気持ちの通じそうなお客様が
いらっしゃらないなと感じる1日もあります。

前日に確認電話を差し上げてはいますが、お客様がよく聞いてなくて、
お越しになってから、予約内容が違うといわれることもあります。




最近混み合う日は、
朝食会場を2回転(7時半からと、8時45分から)に
分けさせていただいています。

年々、係も年を取り、人数も減ってきました。

一階と二階に分けると効率も悪く、人件費も多くかかります。

そこで、以前は一階と二階に朝食会場を設け、
全部で三箇所の朝食会場でしたが、二階を使わないことにしました。



今まで時間のトラブルはありませんでしたが、
今回はじめて、8時45分からでは遅いというお声が出ました。

子供がお腹をすかせてしまうとのこと。

でも、7時30分からはもう席がいっぱいでした。

それだけの為に、ご到着時から変な空気が漂い、
楽しくない旅にしてしまうのは残念なことでした。

どこのホテルでも、朝食付きで泊まっても、
レストランがいっぱいだと待たされます。

だからそういうことがあっても、ある程度仕方が無い。


でもよくよく見たら、
そのお客様のお子様は、離乳食とランチプレートでしたので、
お部屋にお子様の分だけ、お持ちすることにしました。

お夕食のとき、まだ、朝食の件が後を引いているかなと心配しました。


でも、伺ってみるとそんなことはありませんでした。

皆様おやさしく、お子様の一ヶ月前倒しの誕生日祝で、
かわいらしいお子様たちの姿で、
みんなの心が和らいでいるように感じました。

一番上のお子さんが、私が退室しようとすると、
勢い良く胸の中に飛び込んできました。

うちの孫より二つくらい大きいお子さんは、ずっしりと重かったです。

そうしたことも、ご家族の空気を優しくしたようでした。


     一生懸命おもてなしをすれば、

     通じる方には通じるんだ!


怒られつづけていると、気持ちも萎縮してしまい、
笑顔が半分になっていることも。

いけない、いけない。


最近年を取ってきたせいか、
苦しいことから脱却してもなかなか本来の元気が戻ってきません。

嫌なことを克服した後、
バネがはねるように接客に熱い気持ちを持ちつづける。

今日も、新しい紋屋の、私と心通じるお客様をつくれるように頑張ろうと、
なかなか思えなくなってくる。


     もう、今までのおなじみさまだけで、

     私の時代は終わりなのかもしれない...。



ところが次の日、再々度のお客様からは、

「前回は、おかみに会えず残念だったので、今回はお目にかかりたい」と
メッセージが着いていました。

みると、一回目は私がまだ月の座で配膳をしていた頃、
お越しになったお客様でした。


     「覚えていてくださったんだな」と嬉しく思いました。


お料理がお好きで、調理長の野菜の切り方などに感激し、
持ちかえって自宅で研究するとおっしゃって、
ちり紙に野菜を包んでお持ちかえりになったお客さまでした。



また、今回で4回目になった、あるお客様。

いつもタイミングが合わず、お話できなかったのですが、
今回たまたまゆっくりお話が出来ました。

なんとも、お話の調子があうのです。

おそらくこの方の暮らしぶりは、
非常に豊かでいらっしゃる方なのだろうと思えます。

高級旅館だっていくらでもあるのに、
紋屋のように古くてエレベーターもない宿にお越し下さる。


    「ここは、料理をよく研究しているし、サービスも良い。

     眺望が素晴らしいし、窓がいつも綺麗だ。」


きちんと評価してくださっているんだなと、嬉しくなりました。


そのお客様のお隣のブースで、古希の祝いをして差し上げたのですが、
それが聞こえて羨ましくなったそうです。

そのお客様はいま還暦で、もうすぐ61歳になってしまうのだとか。

そうだったのかと、
早速還暦のお祝いの用意をして再度その方のところへ出向きました。

恥ずかしがっていらっしゃいましたが、お喜び頂けました。



昨日はまた、お話が合うお客さまに多く恵まれた嬉しい一日でした。

足が悪くなって、月の座に入れなくなった時から、
お客様との触れ合いが少なくなり、どこかで卑屈になっていたのです。

挨拶と言う形ではなく、配膳などを通して、
自然にお客様と触れ合えるのが、本来は理想なのです。


   社長にその話をしたところ、

     「年齢に関係ないよ」といわれました。



どんなに恨みのこもったご感想を頂いても、へこみ過ぎないように、

いつまでも大好きな接客の仕事に対する大事な気持ちを

忘れないようにしなくてはと、改めて思いました。



どうかこれからも、良い出逢いに恵まれますように。




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◆素顔の女将◆

   孫が出来たせいか、もう歳だから傷ついた心のリカバリーに
   時間がかかるとか、新しいお客様は私には作れないのかもとか、
   気弱なことを言う家内。

   いやいや、心の通うお客様と接している時のあなたは、
   とても嬉しそう。生き生きしているよ!

   いくつになっても、あなたのお客様は生まれると思うな。

                            (by aruji)
2月6日
305号
◆ 彩りのようなもの ◆


先日、女流書家の展覧会があり、日本橋高島屋に出掛けました。

小さいときから良く足を運んだ百貨店ですが、駅から少し歩くので、
最近は余り足を向けない百貨店になっていました。


展覧会が8階だというので、エレベーターに乗ることにしました。

日本橋高島屋のエレベーターは、大変古い形式のエレベーターです。

エレベーター内での操作が必要なため、
今では珍しいエレベーターガールがいます。


   エレベーターの箱から外へ出て、
   「上へ参ります」と軽やかな声が響きます。

   白い手袋をして、上へのパフォーマンスもつきます。


専門的には、顧客サービスと言う部門になりますが、
最近のエレベーターは、ほとんどお客様がセルフでボタンを押すのが
普通になっています。


久々のエレベーター内での女性の誘導に、新鮮な気持ちになりました。

売り場がどこにあるとか、今こんなイベントをどこでやっているとか、
丁寧に教えてくれます。

気持ちが良いですよね。

いつもは店内の地図とにらめっこして、自分で探すのですから。


帰りは、私一人しか乗りませんでした。

すると、私のほうを向いてニコニコしてお辞儀をしてくれます。

1階への直通エレベーターでしたが、
地下へ行く場合の行き方まで教えてくれます。

何も買ってないので、申し訳ないような気分になりました。

経営的には、もちろん無駄?に近い。

絶対必要な人手ではないような気はします。
入り口に店内案内がいれば、それですむとも言えます。


   しかし、今時なかなか無い体験だったので、

   やっぱり人って良いなあと実感しました。



そのあと、習い事に出掛けて、帰り主人に迎えにきてもらい、
私たちがお気に入りのイタリアンレストランに行きました。

最近お子さんを産んで、
奥さまは最近あまりお店にいらっしゃらないのですが、
その日は珍しくいらっしゃいました。

昼間や夜、
奥さまの代わりにいらっしゃるウエイトレスの方も感じは良いのですが、
やっぱりシェフの奥さまが一番!


   何故なのかなと自分でも不思議に思うのですが、

   奥さまがいらっしゃらないと、

   お料理はいつものように美味しくても、

   なんとなくつまらないのです。


例えば、出てきたお料理の中に珍しい野菜が入っていたり、
なかなか普段見ないショートパスタだったり、
作り方を教えて欲しいとき、
その答えだけをウエイトレスさんは聞いてきて、
それで終わってしまうのです。


   その後につく、プラスαが欲しい。


例えば、その日、ほかにお客様がいらっしゃらないと、
「今日はすごく暇なんですよ。こう言うときは心配になりますね」
とか、何気ない会話。


私達は常連で素性もわかっているので、お互いに商売の話も出来る。

そんなことが嬉しい。


   ちょっとした世間話があるかないかの違いなのでしょうね。



そのように考えると、
「私」の存在はどのように役立てられるのだろうかと考えさせられます。


昨年の11月頃、
「ベビームーン」という妊婦さんのためのプランでお越しになった、
あるお客様。


最近は、婚姻率・出産率も下がり、
妊娠中の不安が大きいかたもあるようです。

とくにつわりが強い方は、とてもつらいようです。

わたしも妊娠中は、つわりが子供を産むまであったのです。
特に4ヶ月から5ヶ月のときは、入院したほうが良い状態でした。

食べた物を吐くだけでなく、胃液をたくさん吐いてそこに血液が混じり、
真っ赤な胃液をたくさん吐き、苦しい毎日でした。


人によっては、まったくつわりがない方もある。
また、同じ人でも、一人目は軽く二人目は重いこともあります。

経験者としてそんな事を話しかけ、お話しさせて頂いただけで、


   「とても気持ちが楽になり、不安が取り除かれました。」

    と、感謝されました。


最近の同じプランのお客様も、
妊娠8ヶ月なのにまだつわりがあるとおっしゃっていました。


   「私も産むまでありました。辛いですね。でも産めば治ります。」

   と申し上げると「産めば...治りますね!」と

   実感を込めておっしゃっていました。


そんな小さな事ですが、毎日一つでも

お越しになるお客様にプレゼントしたいなと願っています。



   人間である以上、どんなにIT化しても、

   直接の触れ合い、人の心の温かさには勝てない。



そんな気がするのです。



私は、手紙は99パーセント、手書きでお出しします。

時々頂くお礼状のお返事がとてもとても嬉しいものです。


お電話もなるべく心に残るよう、「会話」を入れます。

自分の感情も入れるのです。何度か電話を頂くとき、

「前回の方、女性の高尾さん」と指名してもらえるように、
努力したいと思います。


   こうした小さなささやか過ぎるくらいの心遣いが、

   お客様の心の彩りになったら、私は幸せだと思います。



いつどこで、

大きな自然災害に巻き込まれるか分からないといわれている昨今。


思い切り毎日を大事に、1日1日が素敵であるように、

私達もお越しになる皆様に、想い出作りのお手伝いをさせてください。





●久々のあるじの正体●


家に帰り、私が寝室で一人で作業をしていると、
arujiはこっそりのぞきに来る。

ふと気が付くと、私に隠れてこちらを見ているのです。

しばらくするとまた気配。

   「なんなの?」と聞くと、「一緒にいないと淋しい」

狭い家なのにネ。


こっそり半身だけドアの脇から顔を出して

のぞいている姿が不気味。かなり変わったaruiです。

                            (by okami)



  (aruji:注)正確には、こっそり顔を半分だけ出し、
   家内に気付かせて驚かせるイタズラです(笑)




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◆素顔の女将◆


節分にこだわって豆をまきたがる家内に、豆の入った小袋を渡した。

さっそく豆まきを行うのかと思ったら、


   「まいた後に拾って食べるから、落花生じゃないとダメ」と。


じゃあ、袋ごとまいて回収したらいいじゃないかと言うと、
大豆は美味しくないと言う。


   どうやら家内にとって豆まきは、
   季節の行事というよりも“スナック”みたい。

                            (by aruji)
1月22日
304号

◆ 心に残るちょっとしたこと ◆


以前、あるセミナーで、

いつまでも忘れない感動を残したおもてなしを受けたことがありますか?

どんなことでしたか? と聞かれたことがあります。



ほとんどの方が、「うーん」と唸ってしまうくらい、意外とないのです。

仮に少しくらいあったとしても、すぐに風化してしまうのが普通です。


   それだけに、何か心があったまったという話を常に収集し、

   自分でもどうしたら喜んで頂けるかなと、

   お金を投じておもてなしをするのではなく、

   考えに考えて創り出していきたいと思います。



最近で印象に残る言葉を頂いたのは、次ぎのようなことです。


先日タクシーに乗った時のことです。

交差点で横断歩道を渡り、タクシーがいるか見たところ、
2台いましたが、2台とも追い越し車線にいました。

ちょっと手を上げづらいなと考え、
少し先まで歩いて次ぎの車を待とうとしました。

道が渋滞していたので、結局先ほどの車が私の前にいます。

私が見ていたら、運転手さんもこちらを見ています。
それでやっと手を上げました。

乗ってから、手を上げるタイミングが難しいとお話すると、
とても気持ちの良い丁寧な言葉遣いで、
タクシーの乗降についてお話をしてくださいました。


   「私は足が悪いので、足の治療に来ているのです。

    股関節の病気なのです。ここから次ぎの場所に行きたいときに、

    いちいち駅まで歩いて列車にのり、また駅から目的地まで

    歩けないのです。それでよくタクシーを利用するんですよ。」

と話すと、驚きながら話を聞いてくださり、


   「そうですか。ありがとうございます。私がタクシーを代表して」


とおっしゃいました。それは、小さな驚きでした。




その方は、まだタクシードライバーとしては歴史が浅いそうですが、
何か、今までの違う職業のときのお仕事ぶりが目に見えてきそうな気が
します。素晴らしい応対だなと感心しました。

その方の応対は、今までのタクシーの運転手さんの応対とは、
かけ離れているように感じたのです。

明るく丁寧で、落ち着きと上品さが伴っていました。

最近のタクシードライバーさんたちは、
良く教育されていることが多いです。

それだけ、タクシー業界も大変なのでしょうね。


それでも、ぶっきらぼうで、運転が荒い方も昔はよくいました。
最近は、タクシー会社を見分けて利用しようと思っています。

教育を受ければ、ある程度まではレベルが上がりますが、
私の評価としては、その人そのものの素の感情や気持ちが、
どれほど入っているかということが、
きちんと伝わるということに重きを置いています。


   作り笑顔、綺麗な言葉でも、眼の奥が笑っていない。

   決して失礼ではないが、温かみを感じない。

   特に感じは良くないと言う人のほうが圧倒的に多いです。


「温かな心が伝わる接客」は、人間の気持ちがやさしくなると思います。




私が、治療のために良く使うあるJRの駅。

小さな駅ビルに繋がっているのですが、
そこにいつも立っているおじいさんがいます。

もちろん駅員さんです。

今は自動改札なので、あまり多くの仕事はないと思いますが、
いつも通る客を一生懸命見送っている感じが伝わるのです。



一度、傘を駅構内か、もしくはビルの中のどこかにおいてきてしまい、
探そうとしたことがありました。

駅のホームの椅子ならば、一度改札を通る必要があります。

「傘をどこかにおいてきてしまいました。駅のホームの椅子にあるかどうか
見てきたいのですが...」というと

「見に行くだけ? それなら行ってらっしゃい。」と快く通してくれました。

行ったら無かったのですが、結局、駅ビルのなかのお手洗いにありました。


その後、用事を済まして帰る時に

「傘ありました。ありがとうございました。」と結果を伝えると、

にこにこして「そりぁ良かったね。どこにあったの?」と聞いてくれました。



言葉遣いは、あまり丁寧ではありませんが、
どこかのどかで、心がある気持ちがするのです。

そこを通るときは、必ず顔を出して通る人たちを見守っているのです。

自動改札では、今はあまり見うけられない光景です。

一応、人がいると言う感じの方が多いです。

そういう感じだったら、傘があったことのお礼を言えなかったと思います。


   傘があったことをお互いに喜べる。

   同じ気持ちを共有した感覚です。


きっとその駅員さんは、
列車が好きで改札業務に長く従事していた方なのだろうと想像できます。

その仕事に懸命だった姿、
一人の人間として業務を遂行していたことが目に浮かんできます。



販売やサービスを売っている仕事の人たち。

私達も同じですが、単純に売上があがって、とりあえず一生懸命仕事をして、
お客様にも喜んで頂けたと実感する。

それはよいことです。


でも一番大事なことは、そのお客さまの立場に立っていること。

   望んでいることを察知できること。

   望んでなくてもして差し上げることで、
   さりげなく喜んでいただくこと。

   そのことが何より好きで、売上より自分の立場よりも、
   そのお客様を思えること。


人対人なので相性もあり、また、人間なのでうまく行かないこともある。

気持ちが伝わらず、とんでもない誤解を受けることも。


   でも、一生忘れられないようなおもてなしを
   きっとし続けていきたい。

   一生忘れられないとおっしゃっていただく感動的なおもてなしを、
   少しでも多く残したい。

   それはきっと、サービス業でなければなかなか出来ないことだから。


何か、素晴らしい体験がありましたら、ぜひ教えてください。


私もそうしたお話を参考に頑張ります。




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◆素顔の女将◆

病院や書道の関係で出かける事の多い家内だが、
出先で心に残った出来事があると、「こんなことがあったのよ」と
迎えに行った帰りの車中で話してくれる。

不愉快な目にあった話しの時もあるが、良い話しの時が多い気がする。

     ちょっとした温かい事でも感じられるように、

     心のアンテナを掲げておくことは大事だね。

                            (by aruji)
1月10日
303号

◆ 口コミは主観です ◆


お正月早々に、食べログの偽口コミの話が、ニュースをにぎわしていました。

もう数年前からやらせの口コミは存在しており、専門の業者ではなくても、
自分の店の評価を高くしようと操作しているところは
ずいぶんとあるそうです。


   それを信じてその店に行く方々は被害者ですが、

   そろそろ口コミというものがこの世に出て長くなりましたから、

   店のレベルを探る手段を、替えてみるのも一つだと思います。


昔は口コミなどというものはなかったので、
何かと店自体が作ったホームページそのものを、実際よりも良く作り、
騙したもの勝ちと言う感じが確かにありました。


   私はそれが大嫌いで、紋屋のホームページに「お許し下さい」

   という、紋屋の至らない点を載せたページを作りました。

   その当時、マイナス情報を載せることは結構画期的であり、

   同業やネット関係者のみならず多くの方々が、

   そんなことまで書いて大丈夫なのかと心配しました。


今は、口コミでなんでも書かれてしまう時代なので、
悪いことを隠しても無駄な努力の部分もありますが、
その「口コミ」なるもの、すごく人に寄って千差万別だと思いませんか?


   男女の違い・年齢・職種・気分でも大分違いがあると思います。


旅館においてはまず、その方がどの程度の頻度で、
どのくらいの宿泊単価の宿に宿泊をしているか、
ということが非常に大きな問題です。

宿泊経験が浅いほど、
高単価旅館とごく普通の単価の旅館を平気で比べられます。


それと訪れたときのシーズンと言うものもあります。
前回は鮑が出たのに...というのも、シーズンに寄ります。


   食事に関してはまさしく好みですし、

   100人いて100人が気に入る食事なんて、

   あり得ないと思います。 味の好みは10人十色。


食事スタイルその他、育った環境によるところが多いと思います。


結婚したら目からうろこなんて事は良くある話ですよね。


一般家庭では蛍光灯の家が多いと思いますが、我が家は白熱灯です。

主人が蛍光灯を嫌うのです。いない部屋は電気が消えています。

夜は、足元灯が灯っています。


最初は暗い家だなと思いましたが、
今ではそうでないと落ち着かなくなりました。

紋屋の廊下が暗いと「陰気だ」と時々書かれますが、
それも宿泊体験と生活習慣の違いなのではと思うのです。

旅館やホテルでは、
あまり明るくしすぎないほうが落ち着いた雰囲気になります。


   口コミの評価が良い方が多ければ、

   ある程度信用できると今までは思っていらしたでしょうが、

   偽業者が悪質な偽評価をネットで上げるとなると、

   直接何度か電話をしてみるとか、

   実際に泊まった知人の話を聞くとか、

   本当に知りたい情報は、ご自分の勘と経験が頼りな気がします。



主観が強い口コミですが、アンケートにしてもクレームにしても、
意味不明な思いこみで、恨みがこもっているようなものは、
いかがなものでしょうか。

ネットは投稿が簡単な為、
尚の事もう少し冷静に投稿していただきたいと切に願います。


先日、紋屋に残ったアンケートで

「女将が名乗りもせず、女将だと分かるだろうという感じが嫌だった。」

と書かれました。


私は、その方の部屋にも食事処にも行っていません。
チェックインのときにお目にかかっただけです。

チェックインのときに、「女将でございます」なんて名乗る人はいません。
まして、女将だと分かって欲しいとも思いません。

意味が分からないだけでなく、非常に不快でした。


紋屋のアンケートは、


   『今後皆様により良いおもてなしをするために、

    熱いメッセージをお願いします。』 となっているのです。



口コミでも同様です。

感じ方はいろいろで、主観ですから何を書くのも自由です。


でもそれを読む方は、どうか惑わされないようになさってください。

結局は、今の時代は正直であるのが一番です。


私も紋屋も正直です。


ご要望ご質問は、直接お問い合わせください。



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◆素顔の女将◆

家内が事務所で孫をひざに乗せて抱きかかえていた。

その孫に向かって私がいろいろあやしていると、

「ほら憲真、あるじーじ(注:私のこと)見てごらん。面白い顔だねぇ~」

と、孫をあやしてくずした顔をおちょくる。

あのねぇ、あなたに向かって面白い顔をしてるんじゃないからね。(`ヘ´)

                            (by aruji)

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