◆ 「バスと赤ちゃん」を知って ◆

「バスと赤ちゃん」という話をご存知ですか? 


30年くらい前に実際にあった話だそうで、私は先日テレビで知りました。



   路線バス内で、多くの人たちが乗っています。

   次から次へと乗客が乗り込んできます。

   そのうち段々混んできて、寒い時期でしたが、
   暑さを覚えるような、混雑による不快感を感じ始めました。

   そうした中、一人の赤ちゃんが泣き始めました。

   赤ちゃんはなかなか泣き止みません。

   誰も文句を言いませんが、なんとなく重い空気が流れ始めます。


   赤ちゃんを抱いたおかあさんは、とうとう耐えられなくなり、

   そっと途中駅で降りようとします。


   運転手さんは、それを察して

       「こちらの駅が目的地ですか?」と聞きます。

   お母さんは、

       「本当は駅まで行きたいが、こどもが泣き止まないので
        迷惑だと思って」と、言います。

   運転手さんはマイクのスイッチを入れて、

       「こちらのお母さんは本当は駅まで行くのですが、

        皆さんに迷惑を掛けているので、

        ここで降りると言っています。

        どうかこの親子を駅まで乗せて行って頂けませんか?」と。


   最初の数秒、沈黙していた乗客たちでしたが、

   一人が拍手したことで、その拍手の輪がひろがり、

   全員が結果的に拍手して親子は無事駅まで行くことができた

   と、言うおはなしです。



とても、心のあたたまる良いお話ですね。


最近、公共の場でのマナーの悪さが目立ち、

自分だけが大事な人々が増えています。


   イヤホンをしていても、その周りに結構大きく聞こえる音楽。

   公衆の面前でお化粧をする女性達。

   座っている人の足が大きく前にせり出ていて、

   前に立つ人や電車内を歩く人の邪魔になっている事も。

   濡れている傘を平気で電車の荷物棚に乗せる人。

   電車内だけでなく、携帯メールをしながら歩く人、

   長傘を大きく振って歩く人など、多いですよね。


公共の場のみならず、他人への思いやり、

隣人家族や会社内の仲間への思いやり、取り戻したいですね。



宿でも、他のお客様への迷惑を心配する赤ちゃん連れのお客様。

泣き止まないお子さんを必死にあやすご両親。玄関をでたり入ったり。

そんなに気を遣わなくてもとはたで心配します。


「隣がうるさいから、注意してほしい」というお客様。

赤ちゃんと言っても、乳飲み子の赤ちゃんと1歳半くらいの赤ちゃんとでは、

発する音が違います。

個人的には、赤ちゃんよりも駆け回るような小学生のほうが

賑やかなような気がします。

赤ちゃんが泣いても騒いでも知らんふりのおかあさんは、いけません。


どの立場の人も、自分ひとりではないことを、

考えられる世の中であって欲しいですね。



先日、社長と出かけたときのこと、ある牛タン屋さんに入りました。

店内は狭く、いつも行列ができている店です。

出来るのをカウンターで待っている時、1匹のはえが店内にいました。

ちょっとだけ気になる、いやなハエでした。

狭い店内、行く先々でお客さんが払っています。


   そうしたなか、店長らしき人が、

   そのハエがすこしとまって休んでいる所を、

   そっと上手にビニール袋の中にしとめました。


それをみた社長は、「おお!」と声を上げ拍手しました。

私も一緒に盛大に拍手すると、まわりのお客さんたちも拍手して、

狭いキッチンで一日中、ずっと牛タンを焼いている人たちも、

みんなが笑顔になったのです。


その店は、午後3時くらいから4時くらいしか、

行列が少なくならない人気店です。


中で一日中、牛タンを焼いているだけの人たちは、

暑くて飽きて大変でしょう。


そういう人たちも、隣り合う人たちと、笑って少し話をしていました。

そういうユーモアが大事だなと思うのです。



先日、病院での待ち時間、雑誌を読んでいたら、泉ピン子さんが、

いやな気持ちを幸福に転換するにはユーモアを持つこと、

と書いていました。


社長の話は、赤ちゃんとバスの話とは雲泥の差ですが、

私が夫として一番好きな部分は、おそらくそのような事だと思っています。



赤ちゃんとバスの話は30年も前の実話ですが、

本当に毎日がこんな風だったら、平和ですよね。


ちょうど私が子供を産み、子育てをしていた時代の話。

大きなお腹を見てバスで席を譲ってくださるのは、

たいがいご年配の女性でした。その頃でさえ。


実際、赤ちゃんがずっと泣いてぐずっていると、決して静かではないし、

その時の体調などによっては、

内心あまりうれしくない時は誰でもあります。


でも、みんな生まれたときは赤ちゃん。それはどうしようもない事実。

自分自身だって、周りに迷惑を掛けていた本人かもしれません。




紋屋には、毎日のようにお祝いのお客さまがいらっしゃいます。

先日あるご家族様は、おじい様還暦のお祝いを兼ねて3世代でお越しでした。

そして、事前に一生の思い出に残る旅行にしたいと書いてありました。

気持ちが引き締まる思いでお迎えしました。


おばあ様は、

    「こちらにいる嫁がこの宿を選んでくれたんですよ。

     心づかいが素晴らしいお宿ですね」と、

私にご家族の紹介をしてくださいます。


お祝いの言葉を述べた後、ご家族様お一人お一人が、

「ありがとうございます」とおっしゃってくださいました。


こんなことははじめてでした。

こちらがお祝いしていただいたような気持ちになりました。

私も、その感激をお伝えしお礼を言いました。



次の日も、お昼近くまで灯台の辺りであそび、

また皆さんで紋屋の玄関や外の看板の前などで、

思い思いの写真を撮り、また再三お礼をおっしゃって帰りました。


人とのふれあいで、心が温かくなる時、

人間として生まれてきた喜びを味わえます。




先日、マタニティのプランでお越しになったあるご夫婦。

とてもかわいらしい奥様でした。

これからご実家に帰り、ご主人様としばらく別々になるそうです。


その意味も含めて、思い出に残る旅行にしたいと、

前もってコメントが付いていました。


出産は苦しいものですが、私はその痛みから解放され、

子供の泣き声を聞いたとき、

自分でも子供が産めたんだ!もう一人じゃないんだ。

本当に女でよかったと思えた素晴らしい体験だったのです。


その話を奥様にさせていただいたら、

     「とても力強く勇気付けられるお言葉をいただきました。

      悪阻がひどくて不安なことだらけでしたが、

      とても心強いお言葉でした。

      このお宿に泊まる事ができ、とても幸せです。」

と、アンケートに書いてありました。



30年前の「赤ちゃんとバス」のエピソ―ドの皆さんも、

きっとその時の幸福感を忘れないでしょう。

上記の奥様も、紋屋を忘れないでいてくださると嬉しいです。


紋屋はそのような宿でありたいし、

世の中も人とのかかわりがやさしい時代であってほしいと願います。




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◆素顔の女将◆

家内の実家は、あまり笑いや冗談が出ない家庭の雰囲気だったという。

それがオジンギャグを連発する夫と再婚したためだろう、
最近では影響されて駄じゃれを口にするようになってきた。

お互い、どちらのギャグのレベルが低いか言い合う、似たもの夫婦(笑)

                           (by aruji)

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