◆ 支えあい ◆


先日ご結婚43周年というご夫婦様がおみえになりました。

奥様は、私と同じ股関節の病気とのこと。

なおのこと親近感が湧きました。


お元気そうに見えましたが、最初は交通事故で手術をなさり、

その後も思わしくなくて、もう一度手術をして、今は人工股関節だそうです。

人工股関節でも、左右の足の長さに誰が見ても分かるほどの差があり、

不自由さが推し量られました。


ちょっとお目にかかっただけでも、

とてもあったかいご夫婦様だと感じるのですが、

お話をうかがった時は、さらに胸を打たれました。

一番は、奥様がとてもご主人様やご主人様のご家族様を大事に思い、

それをはばからずに口に出しておっしゃる事です。



   「この人がいつもどんな時も強くたくましく1本の棒となって

    支えてくれるから、何の心配もないのよ」とおっしゃること。



日本では自分の家族のことを人前でほめないし、

謙遜するのが美徳のように思われています。


でも、私は違うと思うのです。


   一番そばに居る人に対しての感謝、

   それはいつも口に出して言うほうが良い。

   直接いうだけでなく他人に対しても、

   自分の家族をほめたほうがいいと私は思います。



今回のご夫婦様は、ご結婚は43周年ですが、

かなり若い時からのお付き合いで、

9年間の恋愛の末、ゴールインし今に至っているそうです。


9年も交際するとなかなか結婚に至らなかったり、

いたっても続かなかったりというケースが多いのに、

きっとよほどお互いが思いやりを持って心を尽くされたのでしょう。


その間、かなりの困難があったのか、

毎年結婚記念日にはお出かけになっているのに、

またご結婚までの道のりをお二人で思い出され、

感慨にふけってお話していたと私に話されました。

すごい事です。



奥様は、


    「私達はかなり結婚前も交際が長くてね、そうした時に、

     この人の両親が素晴らしい人たちだったから、

     恵まれていたのよ」と。


その言い方にもとても力が入っていて、

内容は判らなくても何か引き込まれてしまうような説得力がありました。



結婚43周年で、その前の9年交際期間。


では、思ったよりもご年配だったのかしらと、

改めてお年を拝見すると、ご主人様は69歳とありました。



   26歳の時のご結婚。

   という事は17歳の時からご交際。

   同い年ではないとおっしゃっていたので、

   奥様は15,6歳もしくは14歳くらいだったということに。



私達よりもひとまわりお歳が上なので、

そのころの常識としては、日本では早熟だというか、

あまり良い目では見られなかったかもしれませんね。


ご両親様が素晴らしい人たちだったから、

温かく見守ってもらえたという事なのでしょう。

ご主人様が、独り立ちして養っていけるようにならなくてはいけませんし、

好きなだけでは結婚はできないですものね。



   周りに感謝して相手を信頼して、そして人前でもほめる。

   ずっとそうして支えあってこられたのだなと感じました。



「人」という字は良くできた字です。


   夫婦が必死に作り上げてきた歴史。尊いものです。

   でも、いつかはきっとひとりになってしまう。

   人は一人で生まれ、一人で死んでいく。


急に夫婦のどちらかが先立ったとき、

支えを失った残された人間は、どのようにして自分を支えるのでしょうか?

だからこそ、通常は仲良く、支えあって生きたいものですね。


そんなことまで考えてしまった、今回のご夫婦様でした。



また昨日は、

ご結婚27周年とお越しになってから分かったご夫婦様がお見えになりました。


奥様のご住所は九州。

「遠いですね」というと、

ご主人は群馬で今日は群馬からいらしたそうです。

きっと単身赴任なんだなあと、大変だなと他人事ながら思いました。



   今日は、いつもは離ればなれのご夫婦さまに、

   良い思い出に残る旅になるようにと祈りました。



お話をうかがってみると、


    「掃除がてら、2週間に一度群馬に出向いて、

     ついでにあちこち連れて行ってもらっています。

     今まではそんな事はなかったので、かえってよかったんです」

と奥様。



確かに、いままでずっと一緒だったとすると、

離れてみてはじめてお互いの存在の大切さやありがたさが身に沁みる

ということも有ろうかと思います。


また、別々にいて自分の赴任先に来てもらうと、

今さらのようにお互い新鮮なのではと感じました。



結婚というものは厄介なもので、

男女の違い、育った環境の違い、家と家の違い、

経験の違いなどすりあわせにはみなさん苦労すると思います。



   そして、ずっと一緒にいると、

   当たり前になり大切にしなくなる。

   ちょっとしたことで、気持ちが通わなくなりなりやすい。

   そうした困難を乗り越えて、

   いたわりあえるようになってくる。



そうしたことが、

結婚記念日を迎えるご夫婦様の大切な一日となってくるのです。



私達、夫婦はお互い再婚同士。

一度の失敗があるので、一度目のような同じ失敗はないと思います。

それでもやはり、いろんな苦労はあります。


最近は、お互いに体の衰えや脳のほうの衰えもあるので、

今までに経験のない労わりあい?みたいな感じがあります。

それも、良いですね。


支えがあることはありがたいことです。



   そして、いつかなくなるその支え。

   その時のために、いつも覚悟もしておきましょう。

   自分ひとりを支える自分自身が作る支え。

   出来るでしょうか?



人間であるが故の悲しさや苦しさ、

そしてすばらしさを垣間見る、そんな紋屋のお客様模様でした。



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◆素顔の女将◆

   入院中の義父さんの体調が芳しくなく、

   また義母さんも認知症が始まっていたりして、

   心安らかでない家内.....。

                            (by aruji)

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